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「乃木坂をよむ!」~Best Songs of 乃木坂46 2016~

乃木坂46

今年で3回目となる年末恒例の(と個人的に思っている)このコーナー。今年はアルバム1枚、シングル3枚、しかも今年からType-Dまで発売されるようになり、配信限定曲を含む総楽曲数は120曲を突破。全曲披露が恒例の『Birthday Live』もついに3日間に分けて開催されるような大規模コンサートになってしまった。

乃木坂46は良曲が多いなんて言われて久しいが、その中でも本当に素晴らしい曲はちゃんと押さえておきたいという気持ちで毎年ランキングを発表している。それと同時に、コメント欄で皆様があれやこれや言ってくださったり、個人のランキングを発表してくださったり、それらを読むのも書いた後の楽しみになっている。前置きが長くなったが、今年リリースされた新曲の中から筆者のベスト5を発表していこう。

5位「光合成希望」

2ndアルバム『それぞれの椅子』に収録されている西野七瀬のソロ曲第5弾、ソロシンガー西野七瀬の新境地となった1曲。彼女の歌声の魅力は常々言われていることだが、これまでの切ない楽曲群とは一線を画すアッパーチューン。伸び伸びと歌う西野の歌声はこんなにも心地よいものなのかと気付かされた一曲だった。詞も秀逸で、私たちには見せない本当の西野七瀬がいるんじゃないかと錯覚させ、彼女のミステリアスな魅力がより引き立つ。楽曲的には超が付くほどオーソドックスなJ-POPだが、こういう曲こそ乃木坂全体で歌うのにあまり向かないソロのための楽曲なのかもしれない。

それにしても「ひとりよがり」、「ごめんね、ずっと…」、「もう少しの夢」、「釣り堀」と、彼女のソロ曲を振り返ってみても良曲の多さが目立つ。もしかすると2016年は、シングルではセンターに立つこともなく過去2年に比べれば西野七瀬の年ではなかったかもしれない。2017年こそは乃木坂46メンバー初の単独ライブとはいかないまでも、色々詰め込んで単独イベントくらいは期待してもいいのではないか。それくらいの楽曲と、歌の魅力が彼女にはある。

4位「遥かなるブータン」

14thシングル『ハルジオンが咲く頃』に収録されている、センター生田絵梨花、齋藤飛鳥、衛藤美彩、若月佑美、堀未央奈、伊藤万理華によるユニット曲。2016年の生田絵梨花はフィンランド民謡や沖縄民謡に手を出してきたわけだが、「ダンケシェーン」と共にその流れを組む生田絵梨花ワールドシリーズ第2弾。

「しあわせの国」と言われるブータンのような幻想的でオリエンタルなサウンドを散りばめながら、強靭なビートがそれらをまとめてひっぱる。サウンドの力強さはときに強引だが憎めないセンター生田絵梨花のようであり、美しい二胡の調べもまた生田絵梨花のよう。同じアジアだという理由で生田に引っ張られブータンへ嫌々連れて行かれるミャンマーにルーツをもつ齋藤飛鳥、ファッション的興味で付いて行く伊藤万理華、行き当たりばったりの生田を支える真面目・若月佑美、みんなの面倒を見るお姉さん・衛藤美彩、あまり何もわかっていない堀未央奈と、西遊記宜しく”生田絵梨花一行”の旅路が見えてきそうな一曲だ。2017年、生田絵梨花はどこへその脚を伸ばすのか。

3位「欲望のリインカーネーション」

2ndアルバム『それぞれの椅子』に収録された、14thシングル1期生アンダーメンバーによる楽曲。アンダーライブが始まったあたりから、アンダー楽曲は「重い女」が裏テーマになっていった。「ここにいる理由」、「あの日 僕は咄嗟に嘘をついた」に始まり、アンダーライブの中心が中元日芽香、堀未央奈に移ると、「君は僕と会わないほうがよかったのかな」、「別れ際、もっと好きになる」、「嫉妬の権利」とタイトルからすでに「重い女」感が滲み出ている。

そんなシリーズの最終章となったのが本作。何が重いって、「気づいた時には死んでた 大切な人に振られて…」という衝撃的な一節で始まり、死してなお相手への愛の飢えで転生してしまうのだ。挙げ句の果てには、「醜いものはすべて土深く埋めて 人の目につかぬ 忘却の彼方へ」と歌ってしまうなんともおぞましい女である。表向きの清楚なグループと真逆ともいえるイメージを敢えて選ぶのは、どうしようもなく人を愛してしまう「重い女」という極端な表現にアンダーライブで挑むことで、アンダーメンバーの表現力を高める目的があったのかもしれない。また、この楽曲で示した安室奈美恵のような「女に憧れられる女」という路線は、ここ数年乃木坂46全体で目指している方向性だ。今年のシングルは卒業ソング2曲に、夏曲となかなかそれを発揮する機会はなかったが、2017年には「女に憧れられる女」路線の新曲がグループとして聴けるかもしれない。

2位「きっかけ」

2ndアルバム『それぞれの椅子』に収録された、卒業した深川麻衣を除く14thシングル選抜メンバーによる楽曲。手掛けたのは「君の名は希望」「羽根の記憶」などでおなじみの杉山勝彦、有木竜郎のコンビ。この二人と秋元康の詞が乃木坂46にまた魔法をかけてくれた。必殺の美しいピアノの旋律。そしてこれも特徴といえる力強いドラム音が楽曲を盛り立てる。そしてメンバーの美しい歌声が重なり、Bメロからサビに入り彼女たちは羽根が生えたように美しいメロディとともに自由に飛び立っていく。

一聴すると卒業ソングのように聴こえるが、それだけではないのがこの曲の奥深さ。2ndアルバムのタイトルが「それぞれの椅子」となっているように、センターに選ばれるもの、福神や選抜の間を行き来するもの、アンダーで活躍の幅を広げるもの、自身の年齢から焦りを感じるもの、下からの突き上げを感じ始めるもの、メンバー一人一人の立場は様々だ。信号のように機械的に自分の道を示してくれるものはない、その衝動が次の一歩のきっかけなのだと力強く示してくれる。それぞれの椅子に座る一人一人の次の一歩を勇気づけるきっかけとなる曲になっている。

彼女たち乃木坂46が駆け抜けたこの5年間、がむしゃらに巨大なライバルの背中を追いかけ、答えのない「乃木坂らしさ」を追いかけてきた。その坂の先に開けたいくつもの選択肢に直面する今だからこそ歌える壮大な一曲だ。アイドルグループの「生きよう」という言葉がこんなにも胸に刺さることが今まであっただろうか。

1位「ないものねだり」

16thシングル「サヨナラの意味」に収録されている橋本奈々未最初で最後のソロ曲。参加曲はユニットも含め多いもののあまり歌のイメージが強い方ではない彼女だが、今までなぜソロで歌わせなかったのかと今更ながら言っておきたくなるぐらいの素晴らしい曲になっている。

この曲の良さは彼女の卒業に合わせた曲ではあるのだが、そうでなくともこのランキングに入ってたであろう名曲だ。乃木坂46ではあまりなかったクラシカルなジャズ曲で、穏やかなウッドベース、ワイヤーブラシによる静かなドラム、そして優しいクラシックギターの音色、どれをとっても美しく、まるで夢の中のような現実のようなまどろみへと導いてくれる。そして一番は橋本奈々未の歌だ。温かい歌声、切ないファルセット、そして何よりタメの聴いたリズムの取り方にぐっと引き込まれてしまう。

詞には卒業する橋本奈々未の切なる願いが込められている。彼女ほどの人気とタレントのある人間が芸能界を引退してしまうことに、「もったいない」「まだやれる」という声はあると思うが、それに対して彼女はこの曲で「なぜ人は誰も目の前にある幸せだけで今日を生きられないの?」と逆に問うてくる。上に行くこと、つまりそれはより多くのCDを売ること、握手会を盛況にすること、大きな会場を埋めること、女優として活躍すること、ファンやスタッフはそれらを常に求めるが、この曲を通して彼女は言う、「もう十分たくさんの幸せをもらいました。本当にありがとう。」と。そして、「ないものねだりしたくない」と歌う彼女の最後の願いは、「一人で微睡(まどろ)める自由があればいい」ということ。ハッとさせられる。彼女が活躍すればするほど、それを私たちが望めば望むほど、幸せを得るとともに彼女の時間は奪われ、もしかしたら苦しめてさえいたのかもしれないと。そして気づくのは、この曲の輝きは人の死に際の最後の一言のようで、橋本奈々未がアイドルとして放つ最期の輝きなのだと。

多くのアイドル、あるいは元アイドルがセカンドキャリアに試行錯誤するなか、橋本奈々未の去り際とこの「ないものねだり」という曲は、常に物事を異なる目線から冷静に見ることのできる彼女からアイドル、元アイドル、そしてファンへの最後のメッセージなのかもしれない。

いかがだっただろうか。5曲中2曲しかMVがなく、かつ2つのMVも「乃木坂46時間TV」の企画の中で作られたもので、少し申し訳ない気がしないでもない。だが、この曲が2016年最高の5曲だと筆者は思うので、MVで聴けない曲はぜひ購入して聴いて欲しい。2016年の乃木坂46最大の発明と言えば、やはり「乃木坂46時間TV」だと思うが、そこでMVが生まれた曲が2曲入っているというのは、はからずも今年っぽい。

ちなみに、今年デビューした欅坂46は本当に良曲が多くてランキングにするのが大変なのだが(過去にReal Soundでレビューしているのでそれを参考にしてほしい)、色々省略して発表すると1位「サイレントマジョリティー」、2位「二人セゾン」、3位「キミガイナイ」、4位「世界には愛しかない」、5位「大人は信じてくれない」。このようになる。

1位の「サイレントマジョリティー」は楽曲のクオリティー、MV再生回数、話題性などはもちろんのこと、7月に放送されたフジテレビ系「FNSうたの夏まつり ~海の日スペシャル~」のコーナー「プロデューサーはあなた! 一夜限りの48&46ドリームチーム楽曲投票!」にて、AKB48「恋するフォーチュンクッキー」、同「365日の紙飛行機」、乃木坂46「君の名は希望」を退けて選ばれたことが衝撃的だった。中学生センター平手友梨奈に代わり、生駒里奈がセンターを務めた通称「イコマジョリティー」も最高だったわけだが、投票結果発表となる「サイレントマジョリティー」のイントロが流れた瞬間、時代が動く革命の足音がした。また、3位の「キミガイナイ」も端的に言って最高の楽曲だ。

2017年、乃木坂46、欅坂46にとってどんな年になるだろうか。どんな年になろうと彼女たちの隣にはいつも最高の楽曲があり続けることを心から願いたい。

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PROFILE

ポップス
洋楽が好きで、「弁当少女」のOPがVampire Weekendで興奮していた類の人間です。
乃木坂46の物語や構造、楽曲について考察し、皆さんと乃木坂46をより深く楽しめたらと思っています。総合音楽情報サイト「Real Sound」にも乃木坂46のコラムを寄稿。

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