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乃木坂散歩道・第204回「『ケーキ王子の名推理』七月隆文」~ホスピタリティ×ドレスコード~

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 今回取り上げる七月隆文さんの小説「ケーキ王子の名推理」(新潮文庫)は、タイトルだけ聞くと男性にとっては中々食指が動かない響きかもしれません。僕も「乃木坂メンバーが読んだから」という、いつもの理由で読み始めた小説でしたが、乃木坂ファンとして、考えさせられる内容が沢山含まれていました。

 中田花奈さんのファンの方であれば、これから先は読まずに、是非「ケーキ王子の名推理」をお読みください。読む前と後では、中田さんのブログの見え方が変わることをお約束します。この小説を読まないであろう方はそのままお進み下さい。この先はネタバレを含む内容であることを予めご了承ください。

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中田花奈公式ブログ「最近は飯ぺろ中心のブログカナ?1178」より。


 漫画「orange」の作者・高野苺さんが描き下ろした少女漫画チックなカバーイラストからも感じられるように、おそらく、この小説は若い女性をターゲットにした作品です。内容は、殺人事件ほどの騒ぎは起こらないけど、日常の不思議が解決されていく連作ミステリー。でも、男性でも乃木坂ファンなら、きっと楽しめる内容だと思います。

 初めに述べたように、僕がこの小説を読んだきっかけは、ファン心理にありがちな『メンバーが読んだから』。いつもと同じ、ただそれだけの理由です。多少不純な動機で読み始めた小説でしたが、途中から話に引きこまれ、最後まで一気に読んでしまいました。
 実に示唆に富む内容で、この小説を読んで乃木坂ファンとして考えさせられたことを、以下に書いていきたいと思います。

「ホスピタリティとドレスコード」

 『ドレスコード』、普段あまり意識しない言葉です。何のためにあるのか? 僕は『敷居を上げるため』位の認識しかありませんでした。例えば、レストラン等で間違って紛れ込んでしまう客を防ぐため。「あなたはふさわしくない」を間接的に伝えるためのものと思っていました。

 この小説から、「ホスピタリティ」と「ドレスコード」は対となる言葉である事を学びました。例えば、レストランが提供するのは主として料理ですが、ウエイターが言葉使い、所作などで、その空間の雰囲気を作ります。テーブルや椅子、絵画、照明といった内装、外観までもが雰囲気作りに関係します。そういったもの全てが、『ホスピタリティ』です。顧客をもてなすありとあらゆるものが含まれる言葉です。

 そして、その雰囲気作りには、その場にいる顧客も重要な役割を果たします。往々にして非難される「金払ってんだから、何したって良いだろ」という態度が、周囲からの蔑視では済まないシチュエーションもあります。そういう場において、「あなた方のホスピタリティに私は応えますよ」という意思表示がドレスコードです。服装を整えて、言動にも気を遣い、その場の『雰囲気作り』に自分も参加するという明確な意思表示です。そうすることで、素晴らしい時間と空間を、その場にいる全員で共有できるのです。

 『ドレスコード』とは、服装だけを気をつければ良いというものでは無くて、『ホスピタリティ』に応える意識も含めて『ドレスコード』なのです。

「ケーキ王子、ホスピタリティを学ぶ」

 この小説の登場人物の一人、『ケーキ王子』はケーキ職人としてコンテストに出場します。自身が持つ技術の全てを発揮して、最高のパフォーマンスで飴細工を作り上げました。最優秀賞であることを確信するケーキ王子。でも、結果は入賞すら逃す『惨敗』。

 師匠はケーキ王子に「絶対的に足りないものがある」と告げます。
 ケーキ王子はいわゆる勝ち組(に見えるキャラ設定)。コンテストにも絶対の自信で臨みました。その『自信』が落とし穴でした。自分の技術、パフォーマンスを見せつけるだけの作品、そこには、作品を見る人を楽しませようとする意識が足りなかったのです。
 絶対的に足りないもの、それは『ホスピタリティ』でした。

 『挫折』からは学ぶことは沢山あります。若者はこうして『ホスピタリティ』を学んでいきます。正直、その若さが僕には眩しいです。

 誰かのために、そういう意識がホスピタリティの第一歩。最近、僕はその光景を乃木坂のファンの中にも見出しました。
 僕は直接会場で見たわけではないのですが、SNSを通じて、先日行われた永島聖羅さんの卒業セレモニーの様子が伝わってきました。

 『列の前の方の人は座る』

 後ろにいる人にも見やすくなるような配慮です。これは当たり前のことかもしれませんが、集団において、当たり前が出来なくなる雰囲気があります。しかし、先の卒業セレモニーでは、その当たり前をやり遂げ、なおかつ、次のセレモニー(生誕祭)にも影響を及ぼしました。

 その場にいた皆さん、その時の雰囲気は如何でしたか? ホスピタリティにあふれていたんじゃないでしょうか。もう後ろだから見えないということがないように。こうした取り組みが今後の開催にも引き継がれていくことを願います。

 これを受けて、僕は自省しました。ホスピタリティあふれる空間に居合わせた時、その雰囲気を大事にするドレスコードを自分は身にまとえていたか?と。乃木坂ファンとしての活動を通して、僕には学ぶべきことがまだまだ沢山あるようです。

「食指が動かない小説=アイドルオタク」

 乃木坂ファンになる以前の僕は、『アイドルオタク』に偏見を持っていたと思います。別次元の人達と思っていました。

 でも、いざ自分がなってみると、アイドルからもそのファンからも、とても素敵な影響を沢山受けています。これって多分、食指が動かなかった小説「ケーキ王子の名推理」と一緒です。読んでみると実に面白い。続編を待ちわびている自分がいます。

 最初のきっかけは、ほんのちょっとの出来事でした。乃木坂も、「ケーキ王子」も。この出会いがこんなにも人生を豊かにしてくれました。まさか、自分がこんなにも泣いたり、笑ったり、怒ったり、悲しくなったりするようになるとは、思ってもみないことでした。

泣いて 泣いて 泣いて それで笑って

まわりすべてを道連れにして

(小田和正『恋は大騒ぎ』より)

 乃木活という大騒ぎ、傍から見たら食指の動かない「ケーキ王子の名推理」の様なもの。でも、一度始めてしまったら、もう止められない。

筆者プロフィール

Okabe
ワインをこよなく愛するワインヲタクです。日本ソムリエ協会シニアワインエキスパートの資格を持ちます。乃木坂との出会いは「ホップステップからのホイップ」でした。ファン目線での記事を書いていきたいと思います。(ツイッター「Okabe⊿ジャーナル」https://twitter.com/aufhebenwriter

COMMENT

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  1. いつもOkabeさんの記事を楽しみにしてます。

    この本はまだ読んでいません。
    自分も中田さんのファンなので記事を最後まで読むか悩んだのですが、Okabeさんの記事のファンでもあるので最後まで読んでしまいました(^^;)

    一過性で終わるものと思って始まった乃木坂ファン歴が気づいたらもう4年近く。
    まさか自分がアイドルのコンサートや握手会に参加するなんて思ってもいませんでした。

    他のアイドルのコンサートや握手会に参加したことが無いので比較することは出来ませんが、自分が思ってた以上に乃木坂のファンは紳士的な感じで、いわゆるアイドルオタク的なイメージは全くありませんでした。
    きっと乃木坂のメンバーの立ち居振る舞いが素晴らしいのでファンの人たちもも自然と周りに迷惑がかからないようにって行動してるのかもしれませんね。

    自分も乃木坂ファンとして恥ずかしくない行動をしていかなきゃって常日頃思っています。

  2. おそらく「作法」というものもドレスコードなんでしょうね。「箸は最低限度しか濡らしてはいけない」というのはそう使うことによって箸使いが上手になる。料理という芸術は食べる側が作法を守ることではじめて成立するという言葉を聞いたことがあります。そういえば「鉄のゲージツ家」として有名だったクマさんがはじめて北野武氏と会った時のことを懐かしそうに話していたことを思い出しました。

    「あるとき飯食おうと思って阿佐ヶ谷の大衆食堂に入っていったらカウンターでサンマの塩焼きの定食を食べてる若いやつを見つけたんだ。箸使いがうまくてなあ、一流の外科手術を見てるようだったよ。この人はよほど(しつけの)厳しい家で育った人に違いないって思った。その若いやつが・・なあ。」武「いやいや・・・w」

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