Nogizaka Journal

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乃木坂散歩道・第137回「『君の名は希望』を巡る物語」

 乃木坂メンバーは少し早い夏休みのようですね。国内組も海外組もブログやモバメを少し忘れて、リフレッシュしてもらって、新曲のリリースキャンペーン、アンダーライブ、夏の全国ツアーに備えてもらえればと思います。
 久しぶりに乃木坂のイベントが無い週末ですね。プリンシパルにアンダーライブに慌しく過ごした最近の出来事を思えば、僕はちょっと寂しく、ちょっと一息ついてのんびり過ごそうと思っています。

https://www.youtube.com/watch?v=JbAgeuQQQ1c

 そんな週末に皆さんにお届けする今回の記事のテーマは『君の名は希望』です。この曲ほど沢山のカバー、アレンジをされている曲はありません。生田絵梨花さんのピアノバージョン、代々木ライブでのオーケストラバージョン、故佐久間正英さんと生田さんとのコラボなんかもありました。CDの特典映像として付いているオーディションバージョンは既にアレンジされたものと言って良いのかもしれません。

 乃木坂メンバーが関わるだけでもこれだけあります。


 乃木坂メンバーじゃない方々の『君の名は希望』のカバーも少し紹介させていただきます。
 乃木坂46×K「ソニレコ!暇つぶしTV」から、Kさんによる「君の名は希望」(7分28秒過ぎから)です。聴いている松村さんの涙が印象的な映像です。

https://www.youtube.com/watch?v=RJeTMD6SgkM
 
 もう一つは、Goosehouseの「君の名は希望」です。GoosehouseはPCで観れるLiveとして、月に一回USTREAM LIVEを行っているシンガーソングライターの集まりです。このライブではオリジナル曲も歌われますが、色々なアーチストのカバー曲を歌うことで有名です。詳しくはGoose house.(公式サイト)を御参照ください。そのGoosehouseの「君の名は希望」は、オリジナルの良さを残しつつも、全く別のテイストになっています。

 あとは、AKB48が独自に行っている「AKB48紅白対抗歌合戦」でも渡辺麻友さんがカバーして、生田さんがピアノで参加していました。こちらはニュースにもなっていたのでご存知の方も多いのではないかと思います。

「解釈」

 僕はカバーとかアレンジとかが大好きです。何故かというと、そこには必ず『解釈』というものが入るからです。『君の名は希望』をカバーするということは、その曲を聴いて、その曲を自分の中に取り込んで、その世界観や物語を想像し、自分なりの「君の名は希望」を創り上げて、そして、表現するわけです。
 この一連の流れの、曲を自分に取り込み、曲の世界観を想像し、自分なりの曲を創るという行為を、『解釈』と言っていいと思います。その解釈には歌い手の個性、+αが表現されます。その+αが僕には魅力的なわけです。

「『君の名は希望』を巡る物語」

 ここからが実は本題です。ある一冊の本を紹介させていただきます。十市社(とおちのやしろ)さんという方が書いたミステリー「ゴースト≠ノイズ(リダクション)」です。この本を知ったきっかけは読売新聞の『エンターテイメント小説月評』のコーナーでした。

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 作中の一部分を引用します。

 「高1の架は、クラス中から『透明人間』のように扱われ、無視されていた。が、ある日高町という女子生徒に声をかけられる。『そういえば、まだお礼を言ってもらっていない気がする』。そこから始まる物語は、甘酸っぱく、苦く、そして不穏」。

 皆さんもなんとなくわかっていただけると思います。この小説に興味を引かれた理由は、「君の名は希望」と一致する物語があるからなのです。そして、僕はこんな『解釈』をしながら、この小説を読み進めて行くことにしたのです、「このミステリーは『君の名は希望』の世界を小説として表現したものである」と。

「ゴースト≠ノイズ(リダクション)十市社」

 高校入学直後のある失敗をきっかけに孤立し、誰からも話しかけられない『透明人間』となった主人公、架(かける)。「あの日からぼくは、31人学級の31人目から、30人学級の31人目となった」(本文引用)。
 2学期の席替えで、前の席に玖波高町(くば・たかまち)が座った時から、物語が動き始めます。他に誰もいない放課後の教室で、架が高町に話しかけられます。「今、目の前で何が起こったのか、このクラスでもう4カ月以上誰とも話さず、この一月あまりは認識すらされない日々を過ごしてきたぼくには、すぐには理解できなかった」(本文引用)。

 「えっと、ぼくが見えるんだね」。

 この本を読み進めて行くうちに、何故、高町が架に声をかけたのか、その答えが見えてきます。そして、それはとりもなおさず、「君の名は希望」に登場する『君』が、なぜ「ぼくが拾うまで、こっちを見て待っていた」の答えの一つとなるのです。『君』という存在は、ただ優しいというだけではなく、『ぼく』と同じように、暗い翳りを内に秘めているから、『ぼく』が気になってしまうのではないか?
 ただの想像にしか過ぎないのだけれども、こうやって自分なりに「君の名は希望」を『解釈』していくのは、「君の名は希望」を崇拝する乃木ヲタとしてはとても楽しい作業です。

 他にはこんなセリフもありました。
 (架)「少なくともこの一年生の間に誰かを好きになれるなんて、まして誰かに好かれるなんて、望みはとっくに捨てていた」。
 場面は変わって、(高町)感慨に浸るように目を閉じ、「ね、そんなことよりさ、『君』ってなんかいいね。私、大人以外から『君』なんて呼ばれたの初めてかも。はぁ、文学だわ」。

 
 『解釈』に正解、不正解はありません。どう受け止めて、どう表現するかがあるだけです。人それぞれの『解釈』があると思います。「ゴースト≠ノイズ(リダクション)」は本来「君の名は希望」の影響を全く受けていない物語だったかもしれません。偶然、いくつかの要素が似ていただけなのかもしれません。でも、僕は「『ゴースト≠ノイズ(リダクション)』は『君の名は希望』の小説化である」と『解釈』してみました。そして、ありがたいことに、この小説を読んで、「君の名は希望」の新たな側面を考えるに至りました、「『君』が何故、ぼくが拾うまでこっちを見て待っていたのか?」という側面です。もっと言うと、何故『君』は『ぼく』に興味を持ったのか?という側面です。
 この本を読んでから、僕には「君の名は希望」は切ない歌として聞こえてしまうようになりました。


 「君の名は希望」ほど、様々な広がりを見せる楽曲は他にはないと思います。様々な要素を内包するがゆえの名曲だと思っています。

 『君』の名が『希望』ならば、『ぼく』の名は?

 そんな疑問から僕の「君の名は希望」の解釈の旅は始まりました。皆さんも「君の名は希望」を『解釈』する旅に出掛けてみませんか? きっと、そして、もっと「君の名は希望」が好きになること間違いなしです。

参考1:乃木坂散歩道 第4回「君の名は希望。では、僕の名は?」
参考2:乃木坂散歩道 第80回「『私のために 誰かのために』は『君の名は希望』に続くストーリー」

筆者プロフィール

Okabe
ワインをこよなく愛するワインヲタクです。日本ソムリエ協会シニアワインエキスパートの資格を持ちます。乃木坂との出会いは「ホップステップからのホイップ」でした。ファン目線での記事を書いていきたいと思います。(ツイッター「Okabe⊿ジャーナル」https://twitter.com/aufhebenwriter

COMMENT

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  1. いつも乃木坂散歩道を楽しく拝読しております。

    コメントネームから推して知るべしですが、僕はミステリーの愛読者です。
    今回ご紹介いただいたミステリーは、老舗の東京創元社から出版されているということもあり、大変興味がわきました。ましてや愛すべき乃木坂46の名曲『君の名は希望』の世界観と共通する作品ということですから、なおさらです。

    こういうご縁でまた新しいミステリーに出会えたことに感謝しつつ、その本を手にしてみたいと思います。
    さらばだ、また会おう!(気球に乗って去る〜)

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