Nogizaka Journal

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ふたつの「空」を巡る話

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 乃木坂46の楽曲を語る上で、絶対に外すことのできない曲がある。名曲として名高い5thシングル「君の名は希望」と、名曲の再来と言われる10thシングル「何度目の青空か?」だ。「何度目の青空か?」は、節目の10thシングルとして、また、待望の生田絵梨花センター曲として満を持して繰り出されたシングルであるということもあり、この2曲について語られる機会は少なくない。今一度、この2曲について考えてみたい。

希望が「明日の空」であるならば

 「君の名は希望」の歌詞が語るストーリー自体は、これまで多くの場でなされてきた検証、もしくは、「(乃木坂が聞く!番外編)林修先生、歌詞解説の特別授業:朝日新聞デジタル」における解説と大きな相違はないと考えられる。しかし、これだけでは歌詞に登場する「透明人間」と呼ばれてしまう程ではないにしろ、冴えない人、さらに語弊を恐れず言うならば「オタク」的な人たちの共感しか得られないだろう。しかし、現実の「君の名は希望」の評価は決してそうではないはずだ。では、何が「君の名は希望」をして、一般的なアイドルソングと比べて一線を画した存在たらしめているのだろうか。そのキーワードは「希望とは明日の空」という一節にある。

 なぜ「希望」が「明日」ではなく、「明日の空」なのか。それは「共感性」の高さにある。「明日」は誰にでも平等にやってくるが、その内容は人それぞれ異なるものだろう。ひとりひとりが異なる「明日」を生きていくのだから、個別の物語しか語られることはない。反対に、「明日の空」は、「空」という言葉を媒介にすることで、共通したイメージを抱くことを可能にする。「同じ空の下で」という言葉がよく使われるのは、やはり「共感」を呼びやすいものだからではないだろうか。個別の「明日」が「空」に集約されていく。つまり、歌詞で描かれているような「希望」のストーリー以外の「希望」、要するに自分の中の「希望」のストーリーを楽曲からイメージすることができるのだ。そこには挫折からの希望があっていいし、喪失からの希望、あるいは別の何かからの希望のストーリーがあっていい。まさに聞いた人の数だけ「希望」が存在するのだ。

 おそらくは「透明人間」と呼ばれるような生活とは無縁であっただろう新内眞衣が、「アンダーライブ セカンド・シーズン FINAL!」で「君の名は希望」のセンターを務めた時に流した涙が我々の心を強く打ったことは記憶に新しい。その背景には、誰よりアイドルになるのが遅かったことの不安、焦燥、そしてそれでも乃木坂46というグループが彼女の「希望」として存在していることを、我々が瞬時に「共感」できたことがあったのではないだろうか。

「空」から語りかける

 「君の名は希望」が共感を呼ぶ楽曲であるならば、「何度目の青空か?」は力強いメッセージを伝える楽曲だ。その形は、「君の名は希望」とは対照的で、まるで「空」からひとりひとりに語りかけるかのようだ。「今の自分を無駄にするな」という台詞は古今東西で言い古されたもののように感じるが、おそらくは「君の名は希望」の時点では、乃木坂46を介してこのメッセージを発することはできなかったし、仮に発したとしても説得力に欠けていただろう。3年という月日を経て、様々な困難を乗り越えてきたからこそ、乃木坂46というグループは、このメッセージを説得力を持って発することができるようになったのである。

 2014年、乃木坂46には本当に色々なことがあった。2015年、乃木坂46はさらなる成長と飛躍を遂げ、どのようなメッセージを語りかけてくれるのだろうか。個々のメンバーが描き出す希望のストーリーはどのようなものになっていくのだろうか。それは予想もつかないことだが、きっと私達の「希望」になるものに違いない。

筆者プロフィール

助六
音楽が大好きでバンドを組んだりしています。乃木坂は楽曲も大好きです。今のところ「他の星から」が一番です。ファン歴はそこまで長くないですが、皆さんと一緒に楽しめる記事を書けたらと思っています。

COMMENT

  • Comments ( 4 )
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  1. ゆうべNHKの乃木坂46SHOW!見返してて「君の名は希望」に寧々ちゃん映ってるの見て、また目頭が熱くなった。本当にあの歌良いよな。

  2. 何度目の青空かは青春へのメッセージと共に、今の日本を歌っているように聞こえます。冒頭の「誰かかが閉め忘れた蛇口」は福島の汚染水を風刺しているようにも聞こえます。環境問題できれいな青空を見る機会が減ったことも含まれていたりして…。気のせいかもしれませんが。

  3. 個人的には今後の乃木坂、君の名は希望を越える曲は出ないのではないかと思うくらい。
    良いお年を!

  4. 君の名は希望は特別な時に聞く曲になっています。
    曲だけに集中できるそんな特別な時間がある時だけ。粗末に聞いたら、何かしながら聞いたらバチが当たりそうな曲だって思ってます。
     5枚目の選抜は本当にドラマがあった。永島聖羅が選抜組の部屋に入った瞬間泣きながら抱きしめにいった白石麻衣の姿も忘れられないし、この曲以降結局一回も選抜に呼ばれることがなかった市來玲奈の挨拶も忘れることはできない。
    「私はこれまで選んでいただいたことに感謝しています。選抜に選ばれた皆さんおめでとうございます」
    乃木坂というグループの真の力を見せ付けられたような気がしました。秋元真夏の電撃復帰という波乱の中生まれた激情の曲、魂が乗り移った曲といってもいい制服のマネキンで乃木坂46はアイドルグループとして生き残ることの厳しさ、時間は待ってはくれないし企業も運営も「ゆっくり成長していくこと」を待ってくれないしゆるしてくれないことをはじめて思い知らされた4枚目。それぞれが葛藤し必死に答えを追い求めた時期がすぎて生まれた5枚目のこの曲。悲しいことがあったから、くやしいことがあったから、それを葉を食いしばって乗り越えてきたからこそこの曲は彼女らが歌うのがもっともふさわしい曲になったんだって思います。彼女たちが仲間のことを思うとき必ずこの曲が聞こえてくる。我々だけじゃなくておそらくメンバーにも。ソニレコ暇つぶしTVで韓国人歌手のKが松村深川の前でキーボード一つだけでこの曲をライブしたことがある。唄い終わった時
    「僕がこの曲を歌っていいのか、この曲を特別なものだと思っている乃木坂ファンの人たちは堂思ったのかとても心配だ」って気持ちを吐露していました。5枚目のこの曲は乃木坂の歴史に燦然と輝く曲なことに違いない。そして10枚目はこれから我々ファンが聞き倒して語りつくして伝説としていかなければいけない曲だと思います。

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