2017年5月9日、AiiA 2.5 Theater Tokyoにて筆者撮影
乃木坂46の3期生が5月9日から14日にかけて、「乃木坂46 三期生単独ライブ」(東京・AiiA 2.5 Theater Tokyo)を全8公演に渡り開催した。まだ記憶に新しい3期生の初舞台公演「3人のプリンシパル」から3ヶ月、「乃木坂46 5th YEAR BIRTHDAY LIVE」(埼玉県・さいたまスーパーアリーナ)というグループの一大イベントを経験した彼女たちが「初単独ライブ」の看板を引っ下げて帰ってきた同劇場には、乃木坂46の一員として、未来を担う覚悟と葛藤を表出する姿があった。本稿では、9日に行われた初日公演の模様を振り返る。
開演前の影アナでは、山下美月が客席に汗を飛ばすくらいのライブをと熱い意気込みを伝え、向井葉月はこの単独ライブが終わるまでに絶対痩せると宣言した。ほどなくして開演を知らせるチャイムが鳴り響き場内が暗転すると、本公演のタイトルロゴが投写された緞帳の奥から、本番に向けて準備するメンバーたちの声が聞こえてきた。オープニングSEの「OVERTURE」を経て、幕にメンバーのシルエットが浮かんで会場が歓声に包まれる中、幕が開くと同時に名刺代わりのオリジナルナンバー「三番目の風」からライブがスタートした。
3期生最初のオリジナル制服でパフォーマンスするメンバー。観客はサビや間奏の「Hey!」の掛け声で拳やペンライトを振り上げ、次第に一体感を増していく。ステージでは、大園桃子に替わり山下がセンターポジションについて2曲目の「ガールズルール」、今度は与田祐希がセンターとなって3曲目「夏のFree&Easy」と、初夏に相応しいアッパーチューンを続けて披露し、熱気を一気に引き上げた。
最初のMCでは3期生のまとめ役・梅澤美波の進行で、上手から順にメンバーが自己紹介と意気込みをコメント。トップバッターの吉田綾乃クリスティーが「3期生で最年長やらせてもらってます」と茶目っ気を出して会場の笑いを誘うと、後に岩本蓮加が「最年少やらせてもらってます」とかぶせて一層和やかな雰囲気に。佐藤楓は、チケットの応募倍率が40倍となった今回のライブに対し、会場に来られなかった人にも届くようなライブにしたいとコメント。他のメンバーも、久保史緒里は「良い意味で期待を裏切れるように」、梅澤は全8公演完走に向けて初日に良いスタートが切れるようになどと、やや緊張した様子ながらも力強く意気込みを語った。
昨年12月に行われた「乃木坂46 3期生お見立て会」(東京・日本武道館)のミニライブでは、当時最高難度のダンスとされた「命は美しい」を1曲目に披露し、先輩たちに続く覚悟を前面に出した3期生だが、その姿勢はより強固なものとなって今回のステージに表れる。ライブはダンスパートへと移り、最初の見せ場であるダンストラックでは、ダンスに自信を持つ阪口珠美がゲットダウンを披露するなど1人ひとりの実力にスポットライトが当てられた。そして、大園の単独センターにフォーメーションを組み直して、各人の練度と魅せ方が試される高難度のダンスナンバー「インフルエンサー」へと続く。伊藤理々杏がセンターを務める「ここにいる理由」では、メンバーが同曲恒例のレーザー演出に合わせてクールな表情を魅せ、「制服のマネキン」で眼力鋭く躍動した山下が「ダンケシェーン」で再びセンターに立ち、冒頭のソロパートを情感いっぱいに歌い上げた。舞台セットの電飾看板は乃木坂46ライブおなじみのものだが、ムービングライトに合わせたレーザー演出などはこの規模にしては珍しく、既にホールクラスでの開催を見据えているようにも感じられた。
本公演2度目のMCコーナーでは、乃木坂46のスマホアプリ「乃木恋〜坂道の下で、あの日僕は恋をした〜」を題材にした「乃木恋リアル」を実施。ステージ後方に設置されたスクリーンにプレイ画面を模した映像が流れ、そのフレーム内にステージ上で演じるメンバーの映像をあてはめたものを、観客がプレイヤー目線で眺めるという企画だ。ここでは、伊藤が放課後の教室で居眠りしていたシチュエーションに挑戦し、初々しい演技を披露。今度は夢の中でも会えたらと伝え、観客の心を鷲掴みにした。
続いてライブは初挑戦のユニットパートへ。今回は曲間にレッスン風景やメンバーのコメントなどで構成したVTRを上映する形で進行し、その中にはこれから披露される楽曲のミュージックビデオ、各メンバーのコメントでキーマンとなる先輩メンバーを中心とした過去のライブ映像も見られた。彼女たちが加入した時には既に、日本屈指のアイドルグループとなっていた乃木坂46。その歴史を築いてきた先輩たちへの敬意、周囲からの期待に伴うプレッシャー、楽曲への想いを、フィーチャーされる各人が語っていく。最初にフィーチャーされた山下は、梅澤・佐藤・吉田との3期生年長メンバー4人で「偶然を言い訳にして」を披露し、憧れの白石麻衣ポジションを担当した。ここまで後方のポジションが中心だった3人も主役となり、早くも3期生内での完成形を見出したかに見えるフォーメーションで堂々のパフォーマンス。次にフィーチャーされた久保は、彼女がまだ乃木坂46のファンだった頃、1stアルバムの楽曲人気投票で1位を獲得した「他の星から」で西野七瀬ポジションを務め、センターとしての胆力を示した。続いて伊藤のVTRを経て、伊藤と与田のダブルセンターで「あらかじめ語られるロマンス」が始まると、3期生の年少組6人がアイドル性たっぷりに可愛らしいダンスを披露。サビでは指先で星を描きながら12星座をファンと大合唱し、最後のサビで中村が空を指差すポーズも頭身の高さが際立った。最後は梅澤がフィーチャーされ、ライブでも人気の「せっかちなかたつむり」を7人で披露した。このパートで強調されたのは、山下や伊藤のコメントに象徴されるように、先輩と同じことをしても自分たちは同じようにはなれない、という声明だ。3期生は各楽曲オリジナルの衣装でパフォーマンスを行いながら、乃木坂46の歴史に新たな物語を加えると同時に、新たな解釈へのアプローチを実践してみせた。
ここで一旦幕が下り、日替わりの1人MCコーナーに突入。初日は、地元・宮城県の東北ゴールデンエンジェルスでチアリーダーとして活動していた久保が、球団歌に合わせてチアダンスを披露した。さらに、抽選箱から引いた座席番号の観客の悩み相談に乗り、チアダンスで名前を呼びながら応援した。1人目のファンは悩んだ末に社会人生活を応援してもらったのだが、その冒頭、肩にかけていた与田の推しメンマフラータオルが久保に見つかってしまい、「隠してください!」と一喝される一幕も。続いて2人目の観客が、彼女ができないことを久保に相談すると、「それは深刻ですね……」と返され、場内から笑いが起こった。
再び幕が開くと、ステージには白い制服に着替えたメンバー、そして後方にギター、ピアノ、パーカッションで編成したバックバンドが登場し、ライブはいよいよ佳境にさしかかる。メンバーたちは生演奏に合わせて「悲しみの忘れ方」、久保が歌い出しから美声を響かせた「何度目の青空か?」、歌割りをアレンジしてソロパートでつなぐ「きっかけ」の3曲を続けて披露した。ここで暗転しバックバンドが捌けると、しばらくしてピアノにスポットが当たり、客席がかすかにざわついた。場内の視線が注がれた席には大園が座り、メンバーは彼女の伴奏で「君の名は希望」を歌い始める。多くのメンバーの目には涙が浮かんでいた。途中、極度の緊張からか、大園の演奏にミスタッチやテンポの崩れが目立ち始め、1回、2回と演奏が止まってしまう。それでも他の11人は、大園への信頼を示すように歌い続け、大園も手足を大きく震わせながら演奏に戻るタイミングをうかがっていた。だんだんと緊張感が高まり、メンバーの表情と歌声は気概と不安とがないまぜになったような色を強める中、会場から自然と手拍子が発生し、ついにメンバーの歌とピアノ、観客の手拍子が一体に。曲を完走すると、この日一番の拍手が湧き起こった。直後のMCで、10日ほど前に演奏を頼まれたという大園は、10年続けたピアノは家で練習したことがないくらい「本気でやったことない」と明かし、練習の成果が発揮できず悔し涙をにじませた。思い返すとこの曲の前に、大園が、「3人のプリンシパル」でも見られた(緊張している時の癖だろうか)両手でリズムを取りながら歌う姿があったが、その時から既に緊張はピークに達しようとしていたのかもしれない。そんな大園をねぎらうように、岩本や中村がレッスンやイベントの合間にもピアノの練習に励んでいた大園の姿を観客に伝え、感謝を述べる。その間際、何を話すべきか逡巡したのか、吉田の方をちらと振り返った岩本は「これが私たちだから」とも語り、大園のおかげで3期生の絆が深まったとまとめた。そして、梅澤の呼びかけで、大園へ再び拍手が送られた。
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本公演2回目の「乃木恋リアル」は佐藤楓が出演。観客は、バドミントン部のことで佐藤の相談に乗る先輩の目線でステージを眺める。落ち込む佐藤になんと声をかけるのか、ゲームさながらにA・Bの選択肢が登場し、「諦める」よう勧める選択肢が選ばれるとブーイングをあげる人も。途中で何かがツボに入ってしまった佐藤が、こらえきれずに何度も吹き出してしまい、観客も大爆笑するなど伊藤とは違った形で盛り上がりを見せる。なんとか気持ちを作り直し、先輩の言葉で発奮して「絶対諦めませんから!」と決め台詞を放つ佐藤だったが、やはり頬が緩んだ。後のMCでは他のメンバーからも「でんちゃん(佐藤の愛称)の良さが出てた」と好評で、佐藤は今後も棒読みを貫くことを冗談ぽく宣言するのだった。
ライブ終盤、衣装は16thシングル冬制服に似たものに変わっていた。17曲目の「ぐるぐるカーテン」では大きな山場を乗り切った安堵感からか、開放感いっぱいに笑顔で歌い踊る12人。中でもライブを通じて笑顔が印象的だった一人の岩本は、間奏で円になり、前のメンバーのスカートを掴んで踊る部分で佐藤との間に距離があいてしまうハプニングに、頬を膨らませながら必死に手を伸ばす姿が見られた。ここからはクライマックスに向けてテンションが急加速。与田センターで「裸足でSummer」、伊藤センターで「ロマンスのスタート」と、人気のアップテンポナンバーで畳み掛ける。再び与田がセンターとなった「おいでシャンプー」の間奏では、福岡出身である与田の掛け声に合わせて「みんなのこと、好いとうよ!」と、おなじみの台詞を博多弁にアレンジして全員でコール。MCをはさんで本編ラストを飾ったのは、この日初披露となった3期生2曲目のオリジナルナンバー「思い出ファースト」。夏にぴったりの爽やかで疾走感あふれる同曲を、大園センターでパフォーマンスし、早速雰囲気をつかんだ観客からは掛け声やコールも上がった。
メンバーが袖にはけ、しばらく余韻に浸る会場。どこからともなく発生したアンコールに応えて、再登場したメンバーは「会いたかったかもしれない」を披露した。この曲から客席内の通路にお立ち台が用意され、中段に佐藤・伊藤・与田・岩本、上段には大園・久保が登場。与田・伊藤の発声で「アイア、最高!」などコールアンドレスポンスも行い、続く「走れ!Bicycle」と2曲続けて超至近距離からのパフォーマンスで観客をわかせた。メンバー全員がステージに集合し、最後に披露されたのは、5年にわたり乃木坂のライブでフィナーレを飾ってきたアンセム「乃木坂の詩」。初めて3期生全員が揃ってのパフォーマンスとなった同曲を、観客と一緒に歌い踊り、記念すべき初日公演を締めくくった。ステージの去り際に、最後まで残った梅澤が観客に向けて深々と一礼をする姿には、乃木坂46の伝統が継承されていく瞬間に立ち会ったような感覚がこみ上げてきた。
まさしく「良い意味で」期待を裏切られた今回の単独ライブ。連日の公演を12人全員で完走した3期生は、初日と比べてどんなにたくましくなっただろうか。日毎に成長していく姿が見られるのもライブの醍醐味だが、活躍著しい乃木坂46でそれを味わうことはなかなか難しい。けれども、きっとこの先の日比谷野外音楽堂での単独ライブや夏の全国ツアーなどで、一回りも二回りも大きく成長した姿を見せてくれるはずだ。約2時間半に及ぶライブは、そう確信させてくれるのに十分な時間だった。
影アナ:向井葉月、山下美月
M00.OVERTURE
M01.三番目の風
M02.ガールズルール
M03.夏のFree&Easy
– MC –
ダンストラック
M04.インフルエンサー
M05.ここにいる理由
M06.命は美しい
M07.制服のマネキン
M08.ダンケシェーン
– MC(乃木恋リアル)&VTR –
M09.偶然を言い訳にして
– VTR –
M10.他の星から
– VTR –
M11.あらかじめ語られるロマンス
– VTR –
M12.せっかちなかたつむり
– MC(1人MC) –
M13.悲しみの忘れ方
M14.何度目の青空か?
M15.きっかけ
M16.君の名は希望
– MC(乃木恋リアル) –
M17.ぐるぐるカーテン
M18.裸足でSummer
M19.ロマンスのスタート
M20.おいでシャンプー
– MC –
M21.思い出ファースト
〈アンコール〉
EN1.会いたかったかもしれない
EN2.走れ!Bicycle
– MC –
EN3.乃木坂の詩
「偶然を言い訳にして」
山下美月(白石麻衣)、梅澤美波(高山一実)、佐藤楓(橋本奈々未)、吉田綾乃クリスティー(松村沙友理)
「他の星から」
久保史緒里(西野七瀬)、岩本蓮加(桜井玲香)、中村麗乃(井上小百合)、佐藤楓(斉藤優里)、吉田綾乃クリスティー(中田花奈)、大園桃子(若月佑美)、向井葉月(伊藤万理華)
「あらかじめ語られるロマンス」
伊藤理々杏(齋藤飛鳥)、与田祐希(星野みなみ)、岩本蓮加(生田絵梨花)、久保史緒里(生駒里奈)、阪口珠美(伊藤万理華)、中村麗乃(堀未央奈)
「せっかちなかたつむり」
山下美月(白石麻衣)、伊藤理々杏(橋本奈々未)、与田祐希(西野七瀬)、向井葉月(松村沙友理)、大園桃子(高山一実)、阪口珠美(中田花奈)、梅澤美波(深川麻衣)
※カッコ内は各ポジションに対応するオリジナルメンバー。
※「偶然を言い訳にして」では、次の「他の星から」に続けて出演する吉田の早着替え対策のためか、吉田と梅澤が楽曲衣装に白のスキニーパンツを合わせてのパフォーマンスとなった。
行けて羨ましいです!笑
今年は特にチケット争奪・戦国時代に突入ですね!!
今年は神宮球場公演の数が少ないし、選抜メンバーの一部も舞台等で夏の全国ツアーを欠席するみたいだから、その分三期生の単独イベントを充実させてもらいたいと思っています。昨年北野日奈子がTOKYO IDOL FESTIVALにソロで出たのに倣って、今年は三期生がTOKYO IDOL FESTIVALに単独で出てライブをやるのもいいと思います。