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「アイドル」の先へ。~乃木坂46の戦略から見る『+α』~

 メジャー、マイナーを問わず、数多くのアイドルがひしめき合う現在のアイドルシーンが「アイドル戦国時代」と呼ばれるようになってから、それなりの時間が流れた。厳しい世界の中で、現在話題を集め、地位を築き上げることに成功、あるいは成功しつつあるグループの多くには、ある共通点があるように思う。それは「アイドル」に「+α」となる要素を持っているという点だ。

現代のアイドルに求められる「+α」

 では、「+α」となる要素として、どのようなものがあるだろうか。いくつか例を挙げてみたい。

 ひとつ目は「アーティスト性」である。既に国外でも高い評価を得ているテクノポップユニット「Perfume」や、先日の武道館ワンマンライブが大きな話題となり、本格的に海外進出に乗り出そうとしているメタルダンスユニット「BABYMETAL」などが主たる例だろうか。いわゆる“実力派”でもあり、どちらもアミューズが手掛けるアイドルだという点は興味深い。

 ふたつ目は「バラエティー性」だ。これはバラエティ番組で人気者になるという意味だけではない。選抜総選挙やドキュメンタリー映画などで、「アイドルの生の姿」を色濃く演出し、ここ数年はその名前を聞かない日がないほどに話題を振りまく大型アイドルグループ「AKB48」。プロレスなどの要素を取り入れた演出や、多くのアーティストとの共演、楽曲提供が話題になる「ももいろクローバーZ」などがこれに該当するだろう。両者の手法は異なるが、バラエティー性に富んだ演出で「アイドルという概念を覆す」という点は共通しているのではないか。

 これらの要素は「アイドル」に馴染みやすいというわけではなく、むしろ本来のそれとは逆のベクトルを向いているものだとも考えられる。現代のアイドルは、アイドルでありながら、アイドルらしからぬ「何か」を同時に求められているのだ。アイドルブームに乗って表出した「ご当地アイドル」や「地下アイドル」の存在をなぞってみると、それを模索するようにアイドル“らしき”活動を始めては退いていく、異様さが見て取れる。乃木坂46に限らず、アイドルをプロデュースし、売り出していく側として、これは非常に難しい問題なのかもしれない。

乃木坂46の追及する「+α」とは

 もちろん、乃木坂46にも高いパフォーマンス力を持つメンバーは多くいるし、「絵」や「ファッション」という別の分野でアーティストになり得るメンバーもいる。また、バラエティ番組で活躍する機会も徐々にではあるが増えてきた。しかし、それらはあくまでも集団に参画する「個」としての活躍である。

 では、乃木坂46がグループとして生き残り、今後も大きく成長していくために乃木坂46の運営はどのような戦略を立てているのだろうか。それは、8thシングル『気づいたら片思い』の初回仕様限定(CD+DVD)盤 Type-A&Type-Bの特典映像から見えてくる。「Creator’s Etude」と名付けられたこの企画は、特定の設定やシチューエーションを与えられたメンバー達が、自らセリフや関係性を作り上げていく、いわゆるアドリブ劇に挑戦するというものだ。

 さらに、女優としての活動機会の多さに注目したい。現時点で、乃木坂46加入後にテレビドラマや舞台などで女優経験のあるメンバーは、秋元真夏、生田絵梨花、生駒里奈、伊藤寧々、伊藤万理華、桜井玲香、白石麻衣、高山一実、永島聖羅、西野七瀬、能條愛未、橋本奈々未、深川麻衣、松村沙友理、若月佑美の計15人(加入以前は含まない)。さらに、學蘭歌劇『帝一の國』に出演する井上小百合、樋口日奈、今年4月から3ヵ月連続公開される乃木坂46主演のホラー映画三部作に出演する中田花奈(他の二作は伊藤寧々、能條)を含めると18人ということになる。

 デビューからわずか2年でこれだけの出演があること、グループ内のアイドルだけで主要キャストを固める『マジすか学園』シリーズ(テレビ東京系)のようなドラマへの出演がないことを考えると、乃木坂46の運営はメンバーに女優としての経験を積ませることに大層力を入れているようだ。乃木坂46の目玉イベントのひとつとして、年一回行われるオリジナルのミュージカル公演、『16人のプリンシパル』シリーズを推していることからも明らかだろう。

乃木坂46運営の戦略から見えてきた「女優」路線

 以上のことから、乃木坂46運営の戦略の大きな柱のひとつは乃木坂46を「女優集団」に育てあげることではないかと考えられる。

 『16人のプリンシパル』シリーズは、舞台の出演者16人を観客投票によって決めるという特徴のせいか、メンバー内で得手、不得手が顕著に分かれる形となってしまっている。そこで、今回のシングルで特典映像として企画した「Creator’s Etude」では、幅広いジャンルから集めたクリエイターとメンバーとの化学反応を窺い、新たに女優として売り出していけるメンバーの発掘に取り組み始めたのではないだろうか。振り返ってみれば、デビューシングルから始まった「個人PV」シリーズの時から、既に乃木坂46が「女優集団」へと進む舵は切られていたのかもしれない。

 「乃木坂46『気づいたら片想い』の特典映像はエチュードとドキュメンタリー」や「乃木坂46 NEWシングル「気づいたら片想い」特典映像決定!!」によれば、今回の「Creator’s Etude」に参加したクリエーターと主な作品は以下の通り。

劇団「ヨーロッパ企画」主宰の演出家・上田誠氏
映画「サマータイムマシン・ブルース」(2005)脚本
映画「曲がれ!スプーン」(2009)脚本

劇団「ペンギンプルペイルパイルズ」主催の劇作家・倉持裕氏
舞台「ワンマン・ ショー」(2003)脚本・演出、第48回岸田國士戯曲賞受賞

CMプランナーの権八成裕氏
テレビCM「earth music & ecology 宮崎あおいシリーズ」
テレビCM「ソフトバンクモバイル SMAPシリーズ」
乃木坂46「バレッタ」MV

映画監督・放送作家の三木聡氏
ドラマ「時効警察」(2006)脚本・演出
映画「転々」(2007)監督・脚本
橋本奈々未個人PV「ススメ!橋本奈々未」監督

松竹芸能のコントユニット「はまぐちコントサークル」主宰のよゐこ・濱口優氏

「THE DIRECTORS GUILD」の映像ディレクター・柳沢翔氏
乃木坂46「シャキイズム」「ガールズルール」「気づいたら片想い」監督
伊藤万理華個人PV「ナイフ」監督・脚本
堀未央奈個人PV「MILK」監督・脚本
Google 「Google Maps 8-bit for NES」ADFEST2013ゴールド受賞
SUBARU iSight「minicar ligt stream」ADFEST2014ゴールド受賞

 ここで注目してもらいたいのは豪華な顔ぶれではない、クリエーターの多様性だ。つまり、結果次第では、生の舞台で存在感を発揮する舞台演劇向きのメンバー、一瞬の挙動や佇まいに得も言われぬ魅力を感じさせる、CMなど短い映像作品向きのメンバー、あるいは乃木坂46の「公式お兄ちゃん」とも呼ばれるバナナマンが得意とするコントをはじめとしたコメディーの舞台というように、今までの主戦場であったテレビドラマ以外の場でも「女優」として活躍できる地平を開拓することができるということだ。

 女優経験のあるメンバーが納得の演技を見せつけるのか。それとも以外な伏兵があらわれるのか。「Creator’s Etude」の本編と今後の乃木坂46の展開に注目したい。

https://www.youtube.com/watch?v=HjhcNyrPQCo
※上田誠組、権八成裕組、三木聡組のエチュードはタイプA、倉持裕組、濱口優組、柳沢翔組のエチュードはタイプBの初回盤DVDに収録。

気づいたら片想い(DVD付A)
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筆者プロフィール

助六
音楽が大好きでバンドを組んだりしています。乃木坂は楽曲も大好きです。今のところ「他の星から」が一番です。ファン歴はそこまで長くないですが、皆さんと一緒に楽しめる記事を書けたらと思っています。

COMMENT

  • Comments ( 4 )
  • Trackbacks ( 0 )
  1. 女優路線、演技路線、クリエーター路線は初期から見えてたと思う
    だからこそそのピークであり5thを境に
    安易なAKB迎合ムードが続き
    どっちつかずな中途半端な立ち位置になっていると思う
    +αにはほど遠い

    • By 副都心線直通Y500系

       乃木坂46がAKB48化しているという話はよく聞かれるが、それを言うならオスカープロモーションのアイドルユニット・X21もむしろ完全にAKB48化していると言えるのではないだろうか。というのも、X21は今回のデビューシングル「明日への卒業」でメンバー21人から12人が選抜されてるんだよね。

       またX21は、今後のシングル戦略でもメンバー選抜方式を採るというから、今後AKB48グループや乃木坂46と遜色がなくなる可能性が出てくる。今から10年前、オスカープロモーションはハロープロジェクトに対抗して美少女クラブ21(後の31)を立ち上げたけど、需要が見込めなかったのと、狂信的なハロープロジェクトファンからネット上でバッシングされたのが仇となって2005年から完全に活動休止となった。それと同時にハロープロジェクトも人気が低迷するなど落ちぶれていったので、結局は美少女クラブ21とハロープロジェクトが共倒れになったと言える。

       このことから考えると、X21が大失敗した場合AKB48グループや乃木坂46も共倒れになる危険性が高くなるかもしれない。

      http://avex.jp/x21/

  2. 「女優」どうなんだろうか。あくまでミュージック+ビジュアルの表現力UPとしてはいいが、MVやステージ、TVでの姿勢や表情。将来女優に進むメンバーはいたとしてもグループでの女優活動は難しいと思う。出来て企画物やTVドラマでしょう。
    グループ活動しながら本格的な映画はスケジュール的に無理だし。そのような活動を女優と言えるのか。ソニーはオスカーではないのだから、それよりも明確な目標が欲しい。ももクロのように紅白やライブなのかAKBを超えるには売上と観客動員も必要であろうし。全国ツアー(すべての都道府県)であるとか。シングル100万枚突破とかを示して欲しいな。

  3. 演劇は演劇としていいけど、もっと歌と踊りを強化してほしいな。
    コンサートの中でも生演奏をバックにちゃんと歌えるメンバーでしっかり歌を聞かせる時間を設けたり、口パクでもいいからダンスに特化した時間を作るとか。企画物は本道では無いと思う。まぁコンサートやらないならいいけど。

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