そこに私が知っている乃木坂46はいなかった。生駒里奈もいなければ、西野七瀬もいない。御三家もいなければ、“みなみおな”もいない。いつもステージに立つ彼女たちはそこにはいなかった。
ただそれだけではなく、私が知っている乃木坂46のアンダーメンバーもそこにはいなかった。一曲目を飾った10thアンダー曲「あの日 僕は咄嗟に嘘をついた」が全ての解答だった。鬼気迫るダンスと絞り出す歌声に気づけばサイリウムを振ることも忘れていた。恥ずかしながら今回がアンダーライブ初参戦となる私にとってはある種の衝撃だった。
伊藤寧々のブログ「ねねころぐ(´・_・`)*476」より ©乃木坂46LLC
10月19日(日)、アンダーライブセカンドシーズンの千秋楽を運良く観に行くことができた。ただの千秋楽というわけではなく、結果的には追加公演などのサプライズ発表がなかったことや、来春に乃木坂46の1stアルバムが予想されることから、2014年最後のアンダーライブだったのだろうと思われる(その後、スペシャル公演はあったわけだが)。そして、結成当初から乃木坂46を支えてきた1期生・伊藤寧々の乃木坂46としての最後のライブであり、最後の活動でもあった。
1曲目に圧倒されていると、間髪入れず次に披露されたのは9thアンダー曲の「ここにいる理由」。この曲のパフォーマンスを初めて目にしたときは独特のダンスにどこか戸惑い、自信なさげに踊っているイメージがどうしてもあった。しかし、今回のパフォーマンスは歌もロボットのような動きも何もかも圧倒的で、「これが見たかったんだよ」と思わず笑顔になる自分がいた。
そのままステージは長めのダンスパートへ。勢いそのままに「狼に口笛を」が披露される。初期アンダーの代表曲を新しい振付で堂々と披露してくれた。
次に披露されたのは、4thシングル「制服のマネキン」。生駒里奈が最も輝く曲の一つであるが、これは私の曲だと言わんばかりのパフォーマンスを見せたのはセンターに立った川村真洋だった。場内を制圧するかのごとく感情むき出しのダンス。そこに選抜に代わって表題曲を披露しているという雰囲気は全くない。選抜常連組でアンダー楽曲を全て踊れるメンバーはおそらくそう多くはないだろうが、アンダーメンバーは全員が表題曲を踊れるし、自分のものにしている。秋元真夏がアンダーライブを見て危機感を感じ、号泣したのはもしかしたらそういう理由なのかもしれない。
今回MCを務めたのは斉藤優里と永島聖羅。優里はグループ全体の中でもMCを安心して任せられるメンバーであり、永島はその優里と衛藤美彩がいなかった前回のアンダーライブでMCとして大きく成長を遂げた。
二人の曲振りでライブの定番曲「ハウス!」、そして6thシングル「ガールズルール」へ。「ガールズルール」で白石麻衣に代わりセンターを務めたのが中元日芽香。彼女もイントロから積極的に煽りを入れ、会場を盛り上げる。今までのライブであまり見られる姿ではなかったが、元々幼い頃から鍛え上げられた純正のアイドルなだけあってその立ち振る舞いは流石のもの。
夏のアンダーライブで披露された「バレッタ」に替わり、今回2期生だけの曲として用意されたのは次に披露された「ダンケシェーン」。昨夏の国立代々木競技場第一体育館での「乃木坂46 真夏の全国ツアー2013 FINAL!」、昨年のクリスマスに日本武道館で行われた「乃木坂46 Merry X’mas Show 2013」の際には何もできなかった佐々木琴子や山崎怜奈がしっかりと歌い、踊り、盛り上げている姿を見るのは感慨深いものがあった。
今回のライブのハイライトのひとつは卒業する伊藤寧々のセンター曲である「涙がまだ悲しみだった頃」だった。実は開場前から伊藤寧々卒業企画実行委員会の方々が伊藤寧々のサイリウムカラーであるオレンジとピンクのサイリウムを全ての席に用意してくれていた。「涙がまだ悲しみだった頃」が始まると場内はオレンジとピンクの明かりに包まれた。今回、ステージ上で派手な電飾はなかったが、結局ファンのサイリウムが一番の電飾であることを客席にいたファンもメンバーも改めて感じたのではないだろうか。
続けて歌われた「失いたくないから」では、寧々を中央に残し、半円状に並んだメンバーが寧々を囲うような形で歌われた。そのときもやはりサイリウムの光が会場を暖かく包んでおり、全体が優しい気持ちに包まれていたように思う。改めて企画してくれた伊藤寧々卒業企画実行委員会にこの場を借りて感謝をお伝えしたい。
「左胸の勇気」「春のメロディー」「扇風機」とアンダー曲が続いたあとには、畠中清羅による一人MCが行われた。内容はメンバーとファンに日頃の感謝の気持ちを伝えるというもの。涙ながらに語られるその言葉が本人の人となりを表していた。前のめりで聴いていたファンも「今後も一生懸命頑張るので応援してください」という言葉を聴いて安堵したことだろう。MC後に披露された5thシングル「君の名は希望」も今日は感動して涙する曲というよりも、希望をもって前に向かおうとする、よりポジティブな姿勢を感じるものだった。
9thシングル「夏のFree&Easy」、「そんなバカな…」「指望遠鏡」と、アッパーチューンで盛り上がる曲が続き、スペシャルライブの抽選会へ。当たらないだろうと最初から思っていたし、実際残念ながら私は当たらなかったのだが、近くの人が当たっているのを見ているとやはりどこか悔しくなるものだ。
抽選会後は、蛍光の手袋をつけてのダンスパート。乃木坂46のライブだと「世界で一番 孤独なLover」の前にダンスパートがあるくらいだが、今回は長めかつ数回のダンスパートがあり、やはり「魅せる」ことを軸にしたライブなんだなと実感した。
本編終盤は、「月の大きさ」を7thの選抜組である川後、中元、伊藤万理華が自分のポジションで堂々としたパフォーマンスをみせ、続く「音が出ないギター」を力強く歌い上げる。「生まれたままで」のパフォーマンスはアンダーライブの原点を感じさせてくれるものだったし、2ndシングル「おいでシャンプー」での弾ける笑顔と溢れ出る爽やかさはこれぞ乃木坂46といえるものだった。
本編最後を飾るのは「初恋の人を今でも」。アンダーメンバーに語りかけるかのような歌詞の内容に、思い入れの強い楽曲とあげるメンバーも多い。この曲はいつかアンダーメンバーがさらに大きな会場で披露するときに、最高の演出をつけてぜひまた見てみたい。
「乃木坂!46!」のコールによって再びメンバーはステージに立った。迎えられたアンコール曲は10thシングル「何度目の青空か?」で、センターに立つのは井上小百合である。乃木坂46を象徴するメンバーとしてよく生田絵梨花が取り上げられるが、井上も清さという面では負けないものを持っているし、西野のような切なさも持ち合わせているように思う。この10枚目シングルをライブで聴くのは初めてだったが、その場の空気を返してしまうサビへの展開は今までの曲にはないものだ。
アンダーライブ終盤の定番曲「13日の金曜日」と、ライブの締めをかざる「乃木坂の詩」をもってアンコールも無事終了した。
最後の挨拶が終わり幕も閉じ、影アナも流れ始めたが、場内ではその影アナをかき消すほどの「ねねちゃん」コールが巻き起こる。その声に応えて再びメンバーが登場し、井上小百合から力強い感謝の言葉が述べられ、ダブルアンコールでは3rdシングル「走れ!Bicycle」をメンバーが寧々を囲みながら熱唱する。卒業に対して悲しい気持ちがないはずはないのだが、会場内はずっとポジティブな空気が流れ、寧々の卒業と新しい旅立ちをみんなで応援しようとしていた。
ダブルアンコールも感動の中幕を閉じ、席を立つ観客も出て来た。私もさすがに終わりだろうと思って、席に着き一息ついた。ただ、周りを見ているとむしろ座っている人のほうが少なく、彼女たちの3度目の登場を信じてやまない人々ばかりであった。そしてそれに応えるがごとく、カーテンは三度幕を開ける。立っているのは、伊藤寧々を真ん中に据えたメンバーたち。楽曲の披露はなく、挨拶のみではあったが、この後のスペシャル公演を見られないファンにとって、このトリプルアンコールは伊藤寧々の乃木坂46としての最後の姿を1秒でも長く見ることのできる素晴らしい時間だったように思う。
かくして全日程を終了したアンダーライブセカンドシーズンは文字通り、血と汗と涙の入り混じる生々しいものだった。セットはトラスを乃木坂マークに組んだだけで、ポップアップのような派手な機構もない。映像モニターもない。照明や電飾もあまり派手な演出はなく、特効も千秋楽でテープを飛ばした際のキャノン砲だけ。彼女たちはとにかく自分たちのパフォーマンスで見せるしかなかったのだ。千秋楽となる17公演目、私の目に映ったのは自信に満ち溢れ、かといって一切の奢りもなく、ただ自分自身と一緒に努力した仲間を信じてやりきるのみといった表情でステージを舞う彼女たちの姿だった。
ここ数ヶ月、アンダー論について書こうとしているが、目まぐるしく変わる乃木坂46の環境の中で、中々納得のいく結論を導き出すことが出来ていなかった。そして、今回アンダーライブを目にしたことで、私の筆は完全に止まってしまった。それは従来の捉え方でアンダーを正確に捉えることが難しくなっているためだ。アンダーライブが始まるころに当時のアンダーセンターだった伊藤万理華が口にしていた「アンダーの概念をぶち壊してやる」はこの半年の間で現実になりつつある。少なくとも私の中で今までのアンダーの概念は跡形もなく崩壊してしまった。最近は選抜メンバーが固定化されていることもあって、「福神」という枠も有名無実化しているが、「アンダーメンバー」という言葉がそうなる日ももしかしたらそう遠くないのかもしれない。
あの日のライブに私の知っている乃木坂46はいなかった。だが、そこにいたのは間違いなく私が見たかった乃木坂46の姿だった。
すばらしいです
記事を読み感動しました
いい記事っ!!
今のアンダーは選抜超えてるよな
心のこもったレポートをありがとうございます。
今回のアンダーライブでは、研究生もかなり成長していたように感じます。9thのアンダーライブでは上手いけどアイドルらしさがない印象でしたが、10thではアイドルとしてパフォーマンスしていました。
特に、こじ坂46として風の螺旋を披露する研究生の誇らしげな表情と、それを生駒ちゃんがすごく嬉しそうに見ていたことが、印象的でした。
選抜―アンダーライブという構造だけでなく、正規メンバー―研究生という構造も壊れているように感じました。
素晴らしい!
選抜、福神固定反対!
もっと色々なメンバーの可能性を試して欲しい。いい素材、能力を持ったメンバーが沢山いるんだから運営はそれを生かしてあげないといかん。
ちくしょー!何て記事を書いてくれたんだ!!
抽選で外れた無念を忘れられる寸前だったのに、また「観たかったーー!」っていう思いが頭をぐるぐる回り始めたじゃないか!!
更に進化するであろう3rdシーズンは観られますように・・・。
すばらしい記事です!ありがとうございます!!
ただ、それだけにこれから乃木坂はどうなるか…選抜常連メンバーとの人気(握手会人気)がどんどん拡大していくなか、岐路に立たされている気がします。アンダーライブが良くなればなるほど、むなしさが大きくなっていく…
今全員でライブやったら選抜食われるかもね。
直近の名古屋・大阪LIVEで「逆襲のアンダー」が実現しますね。
マネキンやガルルが選抜越えのパフォーマンスを繰り広げたように
もはや、先人の48Gのアンダー概念は崩壊し
私は幕張の第一回アンダーメンバーを「LIVE選抜」と呼称した際に
「言葉遊びだ」「選抜に漏れた事への現実逃避だ」と言われましたが
乃木坂独自、唯一無二のそれこそ「LIVE選抜」と呼ぶのにふさわしい新形態を
セカンドシーズンで確立し証明してくれたのではないでしょうか。
アンダーでも横アリまでなら埋められる。
そして奇跡の引寄せ❗
何か色々共感しました。
自分も過去最多のサイリュウム用意して臨んだのに、始まった途端地蔵と化しました。
圧倒されて、ポカンとなってしまい、3曲目くらいでようやく我に返りました。
みなで創り上げた温かみに溢れたライブなんだと感動する記事でした。
この記事を読みながら、メンバーの18公演への意気込み、それを支えた
メンバー個々の努力の積み重ね、パフォーマンスして~・・という言葉が
貫かれている、のぎちゃん達の自己実現への強烈な姿勢が伝わってきます。
また、ねねに対する皆の熱い想いと今後への期待が沁みて来てしまいおもわず;;;;
メンバーに対する愛情あふれる記事でとてもよかった。
その場の雰囲気を感じ取れました。
今後とも、メンバーへの愛情・叱責含む温かい記事をお願いします。
確かに、選抜メンバーより、ダンスのレベルは高いと感じました。
もう、選抜メンバーは脅威を感じているでしょうね、
研究生も十分、研究してきたのだから、もう、あのレベルだったら正規メンバーですよね〜
こちらの記事はいつ読んでも彼女達への愛に満ちている。
一部の選抜メンバーは脅威と感じてくれてるようですが、初期から福神だったメンバーはアンダーライブに興味を持っているのかなと疑問に感じます。
確かに、、、
福神の中で、まいやん、まっちゅん
はアンダラ見に行った話し、聞かないなー。れかたんは舞台で忙しいから仕方ないとして、、、
選抜が固定化してて、日頃にほとんど会うことのないメンバーも少なくないと思う。
例えばまいやんや生田などの福神が固定化しているアンダーメンバー、研究生たちと一緒に仕事する、一緒にのぎ天で何か企画やる光景も今までなかったし、これからもないかなと思っている。
時々2つのグループのように感じ、その間に絆と団結力はあるのか疑問を持っている。これでいいのか運営に問いてみたい。
アンダーの激しいダンスは練習の賜物。それを曲の内容にフィットさせながらパフォーマンスできればよりホンモノになるのではないでしょうか。
アンダーが選抜を超えたというより、アンダーの中に選抜を超えているメンバーもいるなという見方をしています。もちろんLIVEだけが選抜の選抜たるゆえんではないのでしょうから。
AKB48などと違って、選抜とアンダーしかない乃木坂46のチーム編成を見直してもいいのでは。