Nogizaka Journal

坂道シリーズ:乃木坂46・欅坂46・けやき坂46のエンタメニュースサイト

乃木坂46デイリーコラム 第40回・金曜楽曲特集「バレッタ」

乃木坂46デイリーコラム 第40回・金曜楽曲特集#08「バレッタ」

乃木坂46の7thシングル「バレッタ」は、2期生の堀未央奈がセンターに大抜擢され、公開されたMVも観る者により賛否が別れるなど、話題性に長けた乃木坂46の代表曲の一つである。

歌詞には深読みを要求する言葉が目立ち、筆者はこの曲を初めて聴いた時、2番の「昆虫の図鑑にはきっと載っていないって思ってた」「妄想からロマンスがふいに動き出す」という部分に不気味な感覚を覚え、背筋が落ち着かなかった経験がある。

そもそもなぜ、この少年はヘミングウェイを読んでいるのだろう。気になって色々と調べて行くうちに、ヘミングウェイの作品『蝶々と戦車』という短編の存在を知る。急いでその作品を探し研究したところ、面白い共通点が幾つか見つかった。

『蝶々と戦車』の舞台は1930年台、内乱の最中だったスペインの首都マドリッドのあるパブ。そこで、無邪気な男が客を愉しませようと香水を詰めた水鉄砲を客に向けて発射する。内乱で精神的に切羽詰まっていた客達には男の無邪気な遊び心は通じず、男は銃で撃ち殺されてしまうのだ。
あまりの珍景を目の当たりにしたストーリーテラーの「私」は、この事件を小説にしようと考える。すると店の支配人がこう言うのである :「あの男は、今のこの国における状態の中において無邪気過ぎた。彼はまるで蝶々のようだ…その無邪気さが、戦争の深刻さと協調することはないのだ。この事件について作品にするのなら、タイトルは『蝶々と戦車』が良い…」と。

「バレッタ」に出てくる「少女」と「少年」。筆者はこの蝶々を少女に、戦車を少年に置き換えて考えてみた。すると……、前述の「昆虫の図鑑にはきっと載っていないって思ってた」「妄想からロマンスがふいに動き出す」という部分に、少年の抱えている暗い欲望の裏が見えては来ないだろうか。

歌詞にある「ヘミングウェイを読みながら」の部分は、リズム的に「シェイクスピアを~」でも良かったはずである。「ヘミングウェイ」がただゴロが良いから挿入されたとはどうしても思えなくなった筆者は、更に色々調べてみたところある一本の映画にぶつかった。1965年の『コレクター』という映画である。「バレッタ」ファンの皆様には是非この映画を観ていただきたい。なぜならばこの映画で起こる、蝶々の採集が趣味のある男が女性を誘拐し監禁する……、というストーリーが「バレッタ」のMVと気持ち良いくらいに重なってくるからだ。

そのMVは非常に奥深い内容となっており、多様な解釈が可能である。あらすじは「少女を誘拐し人間剥製にして商品として売る闇組織に対し、乃木坂46の福神メンバーが戦いを挑む」というものであり、筆者には「少女を誘拐し、完璧な美として剥製にする」というこの行為が、前述の映画における男の「蝶々を採集し、完璧な形として標本する」ことの寓喩(ぐうゆ)であるように思えてならない。

物語の始まりには、剥製用の注射をするために縛られた、メンバーの伊藤万理華が助けを求めて泣き叫ぶシーンがあるが (彼女の異様なまでにリアルな演技にも注目していただきたい)、ここで問題となるのはその後「さっさともっといい素材を集めてこい!」と悪組織のボスが言い放つ場面、後ろ姿で立つ制服の少女が一体何者なのかということだ。

後ろ姿の少女は、闇組織側の人間 (スパイ) であることが推測されるが、口元のみ映される映像からは誰なのか判別しにくい。最後のシーンから黒幕は「白石麻衣」である、と言った意見が一番多く見られ、実際そう考えるのが一番筋が通るのだが、ここで筆者はこれを「西野七瀬」であると考えたい。
その後の人間剥製を展示する店のシーンでは、メンバーの堀未央奈が新しい素材として客に紹介される。そして堀が福神メンバーにメールで助けを求めるのだが、この時、西野、橋本、若月だけメールで呼び出される描写が無いことも不思議である。

そしてついに福神メンバーがアジトに乗り込み戦いが繰り広げられるが、西野は相手の弾を華麗にかわし、バック転、回し蹴りと熟練した動きを見せており、「本当の」仲間を殺さず、殺したように見せ掛けている……と捉えることも出来まいか。

福神メンバーの活躍で敵は全滅、堀は解放され、全てが解決されたかのように見えたところで、この作品において一番物議を醸し出している最後のどんでん返し、堀が白石を後ろから狙撃するシーンになる。堀の放つ「だって、こうするしかないじゃない」は、初めてMVを観る視聴者を唖然とさせた。
ここで黒幕が西野でなく白石であれば話が通りやすいのだが、西野が黒幕と考える筆者としては、堀は黒幕がいることは分かっていたものの、それが白石であると誤認していたのだと捉えている。
最後に皆が堀に銃口を向け、一発の銃声でこのMVは幕を閉じるが、銃声が鈍い一発のみであることから、これは堀が自分を撃った銃声と考えて良いだろう。全てを知る黒幕を消し、また全てを知る自分も消すことによって、これ以上仲間が犠牲にならぬように……。

また筆者は、乃木坂46の6thシングル「ガールズルール」のセンター白石を7thシングル「バレッタ」のセンター堀が撃つことでセンター交代を表現し、黒幕を西野にすることでその後の8thシングル「気づいたら片想い」における、西野のセンター抜擢を暗示したのではないかと考えている。

作品を通して統一した見解が得られにくい難解な内容となっているのが本作品であり、「僕」という一人称についても、「羽根を立て 気づかれたくなくて じっとしている 僕だ」というフレーズからは「僕」は蝶々であると考えるのが自然な気がするが、「ヘミングウェイを読みながら 僕はチラ見した」というフレーズからは「僕」は少年自身であると考えられる。MVの黒幕についても、後ろ姿の少女が誰なのか分かりにくくすることによって、観る側に考察の様々な可能性を与えようとしているのかもしれない。

曲は全体を通して暗い曲調とされるト短調で進み、序奏から用いられるフルートの音色は、蝶々がひらひらと舞う姿をイメージさせる。またサビのメロディーは独特で、これを冒頭に持ってきたのは非常に効果的である。

ダンスはフォーメーションの変化が早く、小刻みな動きが多いため、統一感を持たせるだけでもかなりの技術が求められるだろう。右手を高く上げて大きく左右に振ったり、右腕を後頭部に当てて手を前後に動かすなど、蝶々が舞う姿をイメージした動きが随所に見られる。

7thシングル「バレッタ」は、高度な解釈を要求する歌詞とMVで視聴者に大きなインパクトを与えた。2期生からのセンター大抜擢も含め、乃木坂46の可能性を大きく広げた大作である。

https://www.youtube.com/watch?v=bteM6Z7dOCU

筆者プロフィール

ななみん教授助手歴773年
医師とチェリストによる異色のコンビが、乃木坂46メンバーや彼女たちの物語を研究・分析。全国の乃木坂46ファンの皆様との情報の発受信はもとより、Nogizaka Journalを訪れる全ての皆様に、乃木坂46についてより深く知っていただくお手伝いが出来ればと思います。

COMMENT

  • Comments ( 5 )
  • Trackbacks ( 0 )
  1. ここまで深くMVを掘り下げるなんてスゴいですね!初めて見た時は謎が多かった記憶です。乃木坂46の表題曲では何故か人気無いですが、私はこの歌に出逢わなければ乃木坂46にハマる事はなかったでしょう。

  2. ここまで広げたのは単純にすごいと思いますが、深読みがすぎる気もします。
    ヘミングウェイは単純に語感だと思ってます。まぁ、解釈は人それぞれなので正解はありませんが。

  3. すごい、観察力です
    もう一度、みてみます

  4. 深すぎる。素晴らしい記事です!MVを見るたびに謎が残っていたがこの解釈はなかった。これが本当だったら秋元さんすごいな。映画と小説もみてみよう

  5. めったにライブでもパフォーマンスされない作品。クリスマスライブや夏の全国ツアーのファイナルそしてバースデーライブ。
    初披露がロックの学園だったことも意外といえば意外だけど自分はこの曲こそ本当のロックだと思ってる。
    7枚目の選抜はことさら堀未央奈のセンターが取り上げられるけど他にもはじめて新選抜が大量に採用された曲だった。衛藤美彩に川後陽奈に中元日芽香。この曲がぽしゃったら「やはり人気メンバーじゃないと売れないのか」って話になってしまいアンダーメンバーは絶望のどん底に落とされるところだった。キャンペーンは新選抜の3人と一番新選抜や堀の気持ちがわかるであろう秋元が一番厳しい岩手の滝に挑んだ。自分はこれは設楽さんがわざとやったんじゃないかとまで思ってる。あの時点でまだ選抜にあがれていなかったメンバーがまあややひなちまなどたくさんいたのに仲間思いの衛藤が心を鬼にして「次の選抜にも選ばれますように」と祈ったのは、「選抜に上がれなくても乃木坂が好きだから頑張っていこうと思っていた」と語った自分の弱さに鞭をくれるためのものだったし川後も中元も真剣だった。自ら1.5期生と名乗って1期と2期の橋渡しをしようとしている秋元は自ら一番厳しい場所を選んだ。これほどの思いを受けたこの曲こそ「本当のロック」だと思っている。

コメントはこちら

*

Return Top