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自然体を受け入れる努力家・衛藤美彩

乃木坂46のメンバーは、受け入れる人が多いように思う。ガツガツした人が多くなく、今自分がいる場所をきちんと認識した上で、そういう自分を受け容れている人が多いと思う。自信のなさが、結果的にそういう性質を生んでいる、ということもあるだろう。そのことが、乃木坂46全体のカラーにも影響を与えているという印象だ。

「受け入れること」を「強さ」に変換した衛藤美彩

Nogizaka46 2nd Album "Sorezore no Isu" Promotional Event "Nogiten" at Shibuya Tsutaya: Eto Misa

そんなメンバーの中でも、衛藤美彩は、「受け入れること」を「強さ」に変換した人だと僕は思っている。

「ある日気づいたんですよ。この世界では決められてることというのは決められているわけで、スポーツとも勉強とも違うと。私はスポーツは比較的できるタイプなので、練習をすればちゃんと結果が出せることを知ってるけど、この業界って何かしたことに対してすぐに結果が出るわけじゃない。(中略)だから今のポジションで自分を磨くほうがいいんじゃないかなって。」(「BRODY」2017年12月号/白夜書房)

「決められてることというのは決められている」というのは、非常に面白い表現だ。一見これは、諦めにも感じられる。でも、彼女の言いたいことは、そういうことではない。現状を認識した上で、自分はどうするのかという意識を原動力にするという、強い意思だと僕は感じる。

「常にこのお仕事は求められたことに対してどれだけ応えられるかっていう準備と、そのときのパフォーマンス力が良ければ、それがすべてだなと思ったんですよ。だから、自分は求められたものに対していかに全力で、自分が持っているものでぶつかれるかという準備を常にしているポジションかもしれないですね。」(前出「BRODY」)

目指すものを持たない、というのが、衛藤美彩の強さの一端なのだと思う。こうなりたい、こうしたい、というものを捨てることで、求められたことに対して何を返すかにすべての意識を集中させる、ということだ。

求められた道に飛び込んでいく

自分の望んだ方向に進もうとすれば、道からして自力で作らなければならない場合もあるだろうし、進んだ先が行き止まりではない保証さえどこにもない。もちろん、そういう道を切り拓ける人もいるし、アイドルというのはそういう過程にこそ輝ける可能性があるのだという見方もあるかもしれない。ただもちろん、誰しもがそういう道を取らなければならないわけではないはずだ。

彼女は、求められることに自分をフィットさせていくことで、自分のポジションを作り上げていった。求められていることであれば、ある程度の道は出来ているだろうし、行き止まりである可能性も低い。ただ、自分が望んでいない方向だったり、あるいは想定もしていなかったような方向だとするならば、いくらそういう状況であっても進みたくないと感じる人はいるだろう。しかし彼女は、そこで躊躇しない。求められた道に、とりあえず飛び込んでいく。

「自分の行きたい場所とまわりが求めてる場所は違うと感じていて。逆に、苦手と思ってる分野に呼ばれて評価されることだってある。そんな経験をたくさんしてきたからこそ、いま目指すことはセンターやフロントではないんじゃないかなと思っていたんです。」(「EX大衆」2017年3月号/双葉社)

加入当時の期待と失望、そしてそのことによる変化

衛藤美彩は乃木坂46が誕生した当時、最も期待されていたメンバーの一人だったと言っていいだろう。彼女は乃木坂46の1期生として加入する前に既に、約1万5000人の応募者の中から「ミスマガジン2011」のグランプリに選ばれていた。乃木坂46を先頭で引っ張っていく存在だと期待されていたはずだろう。

しかしその状況を、彼女自身はこう捉えていた。

「(ミスマガジンという)肩書が先走ってて、色がついちゃってるコっていうのは、純粋に応援できないんじゃないかなって。」(「乃木坂46物語」/集英社)

結果的に衛藤美彩は、初期の頃はうまく活躍することが出来ないでいた。今では選抜の常連となった彼女だが、結成後2年間はアンダーとして活動し続けていた。本人も周囲も、思っていたのと違うという感じだったかもしれない。

彼女にしても、期待感はあっただろう。乃木坂46に加入し、あんなこともしてみたい、こんなこともしてみたい、という希望のようなものはあったはずだ。しかし彼女は、アンダーメンバーとしてなかなか思うような活動が出来ないでいた。本人としても悔しかったことだろう。

そんな経験があったからこそ、少しずつ考え方を変えていくことが出来たのだろう。自分のやりたいことを目指すことから、求められたことに応えていく方へと、自分の意識を振り向けていったのだろう。

やりたいことがなかなか出来ない中で、求められたことで彼女は結果を出していく。例えば彼女は、選抜が抜けた穴をいつでも埋められるよう、複数のポジションを踊れるよう準備し続けた。そんな経験の積み重ねが、「いま目指すことはセンターやフロントではないんじゃないかなと思っていた」という言葉へと繋がっていくのだ。どこを目指すかではない。今自分がいる場所で何が出来るかが大事なのだ、という意識こそが、彼女をここまで大きく成長させていったのだろう。

努力することは当たり前

とはいえ、今いる場所で何が出来るのかという意識を持ち続けるのはとても難しいだろう。特に芸能界という、競争しなければ明日にでも敗者になってしまうかもしれない環境ではなおさらだ。そういう環境にいればいるほど、自分の描く未来へと向けて足を進めていきたくなってしまうはずだ。実力が伴わないまま前へと進んでしまえば、やがて壁にぶつかってしまうだろうし、恐らくその状態では壁を乗り越えることが出来ない。

衛藤美彩は、そんな自分をどうやって抑え、今いる場所で出来ることへと意識を向けることが出来たのだろうか?

「だから私は別に自分がすごい頑張ってるって思ってないですよ。ただ自分に与えられた環境がそうさせてくれるだけだから。壁にぶち当たった時の逃げ方、壊し方、遠回りの仕方、それぞれの人に色々な方法があると思うんですけど、私の場合は足の病気の時(※子供の頃、脚の腫瘍を患い車椅子生活をしていた)のことを考えられるから、人よりも上手くその壁をかわすことができているのかもしれないです。」(「BRODY」2017年4月号/白夜書房)

そんな風に謙遜してみせる彼女だが、努力を努力だと感じないだけの強さが、彼女にはあるということだろう。自分がしていることが「努力」だと思わないことは強い。人は、努力していると思えば思うほど、成果を求めてしまう。そして、努力に見合う成果が得られないと感じられれば努力が無駄になったと感じられてしまう。明石家さんまはかつて、「『努力』という言葉を、日本の辞書からなくせ」と主張したという。理由は、「努力って、当たり前のことやから。当たり前にした方がいい」だ。それに近い考え方を、彼女も持っているということだろう。

努力することが当たり前という考え方は、乃木坂46に入る以前からのものだ。

「部活でもなんでも、私は常に厳しい環境から這い上がってきたんです。それに私にはその方が良いんですよ。スッと上に行ってしまったら、感謝もできないし、天狗になってしまう人間だからこそ、そういう試練を神様が与えてくれるんだと思います。」(前出「BRODY」4月号)

「今のアイドルとしての衛藤美彩に対しては別に100点はつけない」(前出「BRODY」12月号)と言う彼女は、選抜の常連となった今も、そしてこれからも、努力をし続けることだろう。目標を設定すれば、目標を設定し続けなければ自分を動かす原動力は消えてしまうことになるが、今いる場所で何が出来るかという意識を捨てない限り、彼女は動き続けることが出来るだろう。そのことが、衛藤美彩の本質的な強さであるように、僕には感じられる。

自然体を受け入れる

乃木坂46が2年連続2度目の「NHK紅白歌合戦」出場を果たした後、今年はじめのインタビューで、衛藤美彩はグループの課題についてこう語っている。

「いまは『目指す場所』というよりは、この状態をもっと大きくして、もっと長く続けていくことが私達にとって大事なことなんです。そのためにはいまと変わらない気持ちを、ずっと持ち続けることが重要だと思っています。」(前出「BRODY」4月号)

先日乃木坂46は、東京ドームでのライブを成功させた。しかしそれでも、メンバーたちは決して緩むことがない。メンバー一人ひとりが、自分の今いる場所に満足しない意識を持っているからだ。しかし、インタビューを読んでいると、東京ドームが終着点ではないと分かっているけれども、じゃあどこに向かうべきなのかうまく捉えきれていないと思っているメンバーもいるように感じられた。その中にあって、どこを目指すかではなく、今の状態を拡大・継続させていくことに意識を向ける衛藤美彩は、やりたいことや目標と言った呪縛からうまく逃れられているのだろうと思う。

だからこそ彼女は今、「アイドル・衛藤美彩」ではなく、彼女自身としてファンの前やステージに立つことが出来ている。

「今は自分を押し殺してまでするのは違うということもわかったし、(中略)それこそ本当の自分の姿を見せないと良いところも悪いところも見つけてもらえないなと思って。(中略)だから最近はめっちゃ自然体。嫌われたくはないけど、でも別に好かれるために媚びなくてもいいなって。そういうことが自分の中で決まったんです。」(前出「BRODY」12月号)

自分の見せ方を考えるのではなく、自分をそのまま見てもらう。そういう意識もまた、これまで積み上げてきた努力や実績が裏打ちする、彼女の自信の一つなのだろうと思う。

筆者プロフィール

黒夜行
書店員です。基本的に普段は本を読んでいます。映画「悲しみの忘れ方 Documentary of 乃木坂46」を見て、乃木坂46のファンになりました。良い意味でも悪い意味でも、読んでくれた方をザワザワさせる文章が書けたらいいなと思っています。面白がって読んでくれる方が少しでもいてくれれば幸いです。(個人ブログ「黒夜行」)

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