Nogizaka Journal

乃木坂46を中心としたエンタメニュースサイト

齋藤飛鳥の、内的世界の豊かさ~齋藤飛鳥のことば 公式ブログのタイトルから~

【ふと思う事があって、でも誰かに言うほどでもなくって。だからといって誰かから言ってくる事もなさそうで。じゃあ誰とも共有しないの?って考えたら、車がとまった。信号待ち。国によって違う信号。今のところは台湾の信号がすき。ヒトガタが走るの。】

Taiwan. Taipei. Traffic lights

冒頭の言葉は、2016年3月26日付の齋藤飛鳥の公式ブログのタイトルの一部だ。タイトルの冒頭の部分だけ切り取ってみたのだけど、この文章、良くないですか?

ただ僕がこの文章を好きってだけの話かもしれないけど、センスいいなと思う。小説を読む若者が少なくなっているだろうこの現代において、17歳で安部公房を読んでいるという齋藤飛鳥は、内的世界が豊かだろうと僕は思っている。その内的世界が、齋藤飛鳥の言葉に対するセンスを生み出しているように思う。

内的世界を豊かにするものは、決して言葉だけではないだろう。音楽を取り込んで音楽で表現してもいいし、絵画や数学や写真など、なんでもいい。外部から何かを取り込んで内的世界を豊かにし、そこから生み出されるものがある、そんな人が僕は好きだ。

齋藤飛鳥は、言葉を、物語を貪欲に取り込んで、内的世界を豊かにしている人だろうと思う。暗くてモヤモヤする作品が好きなようで、容姿やアイドルをやってるという属性とはかけ離れているところが素敵だと思う。

僕は、乃木坂46が載っている雑誌を最近結構買うのだが、「どんな企画をやってほしいですか?」というアンケートに常に、「齋藤飛鳥に小説を書かせて欲しい」と書いている。もちろん、17歳の今、アイドルとして普通の人がなかなか経験出来ないことを経験しているとはいえ、きちんとまとまった作品を書くのは無理だろうと思う。でも、言葉のセンスはあると思うし、書き続ければいずれ良い物になっていくと思う。だから、雑誌で練習する場を与えて欲しいな、と。「齋藤飛鳥が書いた小説」という売り出し方で一定数の売上は見込めるわけだから、最初は作品の質が低かったとしてもビジネスとしては形になると思う。また、実際に書いて、実際に世の中に出してみて、色んな人に読んでもらって、っていうフィードバックを続けられる環境にあるのだから、チャレンジしてみてほしいなといつも思っている。

小説が無理なら、とりあえずエッセイでもいい。なんの雑誌でもいいけど、毎号齋藤飛鳥のエッセイが載ってたら買っちゃうな、たぶん。他の人と同じものを見ていても、ひねくれた性格と、内側に溜め込んだ言葉とで、他の人とは違った風に物事を見て、違った風にそれを表現できるんじゃないか、と思っている。

 
冒頭の文章は、「じゃあ誰とも共有しないの?って考えたら」から「車がとまった」の展開が一番好きだ。それまで思考の世界に囚われていて、周りの風景なんて視界に入らなかったのに、車が止まったことをきっかけに思考が途切れ、代わりに景色が視界に飛び込んでくる。その一瞬の変化をすごくうまく切り取っているなと思う。

そしてさらに、信号という、目に飛び込んできた情景から思考が展開していく点も良い。読み取りすぎかもしれないが、齋藤飛鳥は常に、目の前の情景よりも思考に傾倒してしまう人なのかもしれない、なんていう想像もした。もしもそうだとして、それが出来るのは、言葉による内的世界が豊かだからだろう、と思う。思考の素になるのは言葉だから、言葉が豊かじゃない人に思考を深めることは出来ない。ナチュラルに思考に囚われてしまうとすれば、それは、意識せずとも内側から言葉が生み出され、言葉によって自然と世界を捉えようとしてしまう性質があるんだろうな、と勝手に想像した。

 
僕が乃木坂46に惹かれるのは、言葉が豊かな人が多いと思うからだ。様々な形で辛い経験をしてきた人たちが集まる乃木坂46。マイナスの経験や思考は、言葉を多く消費する。その経験が、自分の考えや価値観を言葉で表現できる個性に繋がっているのだと思う。そしてそんな乃木坂46の中でも、齋藤飛鳥は一番言葉による内的世界が豊かな可能性があると思っている。だから、どうしても注目してしまう。

(文・黒夜行)

※本稿は、筆者が2016年3月に投稿した記事を再編集したものです。

関連黒夜行のブログ

関連ふと思う事があって、でも誰かに言うほどでもなくって。だ | 乃木坂46 齋藤飛鳥 公式ブログ

筆者プロフィール

黒夜行
書店員です。基本的に普段は本を読んでいます。映画「悲しみの忘れ方 Documentary of 乃木坂46」を見て、乃木坂46のファンになりました。良い意味でも悪い意味でも、読んでくれた方をザワザワさせる文章が書けたらいいなと思っています。面白がって読んでくれる方が少しでもいてくれれば幸いです。(個人ブログ「黒夜行」)

コメントはこちら

*

Return Top