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乃木坂散歩道・第187回「『どちらかが彼女を殺した』東野圭吾」

sanpo187

 「どちらかが彼女を殺した」は1996年に講談社ノベルズから出版された、東野圭吾さんのミステリー小説です。この作品は斬新な内容で、『犯人が最後まで明かされない』小説です。後に講談社から『解説』付の文庫版が発売されましたが、解説(ヒント)はあるものの、明らかな形では犯人は明かされずに、現在に至っています。

 よって、公式には『正解』は発表されておらず、この小説は『読者が自分で推理する』事を楽しむ作品となっているのです。読者がまさに安楽椅子探偵―アームチェア・ディテクティブ―になれる小説なのです。
 書かれた事実を積み上げて、どちらが犯人であるかを論理的に指摘する。犯人(答え)は明示されていないので、正解不正解をではなく、その論理的思考過程を楽しむためのものだと、僕は解釈しています。

「どちらかが“彼”を殺した」

 さて、ここから先はネタバレになります。是非「太陽ノック」Type-AのDVDに収録されている、星野みなみさん×松村沙友理さんのペアPV「どちらかが“彼”を殺した」(監督:山田篤宏)の本編を先に見てから、以下の記事を御覧ください。

 僕が今回のペアPVで一番最初に観たのがこの作品です。そして、やはり東野圭吾さんの「どちらかが彼女を殺した」及び同じ様な手法で書かれた「私が彼を殺した」をモチーフにしたものだと確信しました。
 であるならば、このPVは僕達ファンに、『どちらが彼を殺したのか?』を論理的に思考し、議論しろと言っているのだと思います。その挑戦状を僕は受けることにします(笑)


 以下に僕なりの考えを提示します。皆さんも自分なりに考えてみてから、読んでいただいた方がより楽しめると思います。

「読者への挑戦状」

 もう一度断っておきますが、今回のPVでは、犯人は明示されていません。モチーフとなった「私が彼を殺した」も、未だに犯人は明示されていません。ですから、あくまでも、論理的思考過程を楽しむものとお考えください。

 ミステリーには『読者への挑戦状』という文化があります。わからない方はドラマ「古畑任三郎」シリーズで各話の解決直前に演じられる、古畑の一人語りを想像してみて下さい(この例えが古いという方には、僕は他に良い例をしりません……)。『すべての証拠を提示したから、読者(視聴者)も考えてみなよ』という作者からの挑戦です。

 こういった『読者への挑戦状』的なものの基本的ルールとしては、『フェアでなければならない』ということです。例えば『犯人は実は超能力者』とかは禁忌です。今回のPVで言うと、『二重人格の表現(二人は同一人物内の脳内キャラ)』という解釈も面白いと思うのですが、あまりに現実的ではないものは、『フェア』ではありません。
 そして、ついて良い嘘は限度があります。犯人が『自分が犯人ではない』という嘘はOKです。そうしないとミステリーが始まりませんから。今回のペアPVに関しては、「私が犯人です」までは許される嘘です。相手を庇って(かばって)いるわけですから。前提条件のための嘘までしか許されない、それが『読者への挑戦状』の暗黙のルールです(それ以上の嘘をつくのであれば、嘘であることを論理的に証明できなければいけません)。

 ということで、『フェアなトリック』、『フェアな嘘』が使われることが『読者への挑戦』のルールなのです。

「解決編(仮)」

 『名前』:PVの登場人物は「松村みなみ」と「星野沙友理」です。まず、苗字と名前が入れ替えてあるという事に気が付かなければいけません。どちらがどちらを指しているのかはわからないようになっています。この記事では松村沙友理さんを『さゆりん』、星野みなみさんを『みなみちゃん』と表記することで、混乱を避けたいと思います。

 そして、このPVでは「一度だけ」、二人のうちのどちらかを指し示す『名前』が呼ばれる場面があります。

「松村さんの視力が悪いことは把握しています」

 というものでした。
 (「星野さんは」という台詞もありますが、その後の会話が『みなみちゃん』に遮られ、続く内容がわかりません。よって、「星野さん」が二人のうちのどちらを指すかはわかりません。)

 さて、この『松村さん』は登場人物の「松村みなみ」さんを指すものですが、『さゆりん』とは断定できないのです。「松村みなみ」さんは『みなみちゃん』の可能性もあるのです。これが、僕は『フェアなトリック』ではないかと思います。
 台詞で「松村さん」と言われると、僕達乃木坂ファンはどうしても『さゆりん』のことだと思ってしまいがちです。その『先入観』を上手く突いた『フェアなトリック』ということです。

 ここから先は、PVの設定から外れてしまうので、『フェア』ではないのですが、実際の『さゆりん』の視力を調査したところ、2011年11月29日の松村沙友理さんの公式ブログ「もちが好き☆」で視力が2.0であると書かれています。一方で星野みなみさんは、ライブDVDのメイキングなどでメガネ姿を披露していることから、視力は悪いと推測できます(公式な記述等があったら教えてください)。
 PV内でも『みなみちゃん』は視力が悪いと言っていて、嘘はついてないと言っています。前述の通り、『暗黙のルール』を信じないと、『読者』側の拠り所が無くなります。『みなみちゃん』は視力が悪いと判断できます。
 また、これは邪道な推理ですが、刑事は視力の良し悪しで犯人を指摘しようとしています。二人とも視力が悪いのであれば、犯人かどうかの判断は出来ません。どちらかは視力がいいのです。そして、少なくとも『さゆりん』は視力に関してPV内では言及していません(『言わない』は嘘にはならない)。

 以上から役名「松村みなみ」は『みなみちゃん』と推理します。

 次にメガネに関してです。
 やたらと度無しレンズの話が出てきます。度有だと不都合があるんです。メガネは被害者男性からのプレゼントであり、そのプレゼントの相手が犯人であるとPV内の刑事が推理しています。その推理は多少強引な感じはありますが、時間が無いペアPVにおいては、仕方がありません(笑) PV内での設定ですので、これは従うしかありません。
 で、もしも、そのメガネに度が入っていれば、その度数に合う人が犯人です。度数さえわかってしまえば犯人がわかってしまいます。これではミステリーが成立しません。すなわち、問題のメガネは度数無しのレンズが使われていたと推理できます。

 ひとつ、メガネについて追加しますと、『度無しレンズ』はある意味特殊です。皆さん、度無しレンズってタダだと思っていませんか? PV内の刑事さんが言う様な、度無しレンズを選択する様なメガネにおいて、度無しレンズも結構な値段します。大抵のものは3000円程度から1万円まで幅は広いですが、それなりの値段です。
 これを知ったうえで、再度PVを見てみると、思うことがあります。それは『視力が悪い人にわざわざ有料の度無しレンズを買うだろうか?』という疑問です。ただ、これはそういう事もあると言われればそれまでで、論理的な証拠とはなり得ません。コンタクトをしたうえで、伊達メガネをかけることは有り得ると思います。特にアイドルにおいては、度入りレンズは、『目が小さくなる』、『輪郭がゆがむ』等の理由で敬遠されがちですから。
 このPVにおいて、この度無しレンズに関しては、制作側の論理的ほころびではないかと僕は考えています。

 ちょっと脱線しましたが、PV内の刑事は、視力が良くて、伊達メガネが贈られた方が犯人と考えています。以上の推理により、『みなみちゃん』=「松村みなみ」は目が悪く、伊達メガネを贈られる対象としては、疑問が生じます。『さゆりん』=「星野沙友理」は視力が良いと推測され、伊達メガネを贈る対象としては、何の問題もありません。

 PV内の刑事が推理する犯人、
 “彼”を殺した犯人は「星野沙友理」=『さゆりん』です。

「自説再考」

 かっこよく断定したものの、論理的に完璧ではないんです。弱いところが多々あります。上記以外にもPV内に気になる点が残っています。例えば、二人が会話しているように見える部分。あの部分をどう解釈するかは、実に難しい。
 容疑者二人が同一空間で取り調べは通常有り得ません。その場面で『さゆりん』が凶器について言及する部分があります。その時の台詞に矛盾点があるのではないか? ただ、そこを重視すると、犯人は「松村みなみ」=『みなみちゃん』になってしまうという……(笑)

 また、最後のシーン。最後の台詞は二人とも同じでした。

「私がやりました」

 ボクの解釈としては、画面の右と左は分けて考えるべきで、右側の『みなみちゃん』は『庇った』ことに対して、「私がやりました(庇いました)」と言ったのだと考えました。

 まあ、どちらにしても、自説は自信はありません(笑)

 そこで、僕からの『挑戦状』です。

 僕の説を取り下げるだけの論理的根拠のある説を提示してください。あるいは、僕の説に疑問を呈してください。是非とも議論しましょう! それがこのPVの真の楽しみ方だと思います。
 今回の記事を公開するにあたり、編集長(管狐さん)の推理を聞きましたが、犯人が『さゆりん』であることを除いて、ほとんどの思考過程が僕とは異なるものでした。視力の捉え方も違えば、先ほど挙げた気になる点にも触れているものです。後ほど記事として上げて頂くことになりましたので、皆さんにもぜひお読みいただければと思います。([考察]星野みなみ×松村沙友理のペアPV「どちらかが“彼”を殺した」の犯人は?

追伸:こんなマニアックな記事を最後まで読んでくれたあなたは、相当なミステリーマニアですね?

筆者プロフィール

Okabe
ワインをこよなく愛するワインヲタクです。日本ソムリエ協会シニアワインエキスパートの資格を持ちます。乃木坂との出会いは「ホップステップからのホイップ」でした。ファン目線での記事を書いていきたいと思います。(ツイッター「Okabe⊿ジャーナル」https://twitter.com/aufhebenwriter

COMMENT

  • Comments ( 5 )
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  1. なるほど‼
    自分は、さゆりんが、視力わるい設定で見てました

    さゆりんが、黙ったところで、そう感じました

  2. 伊達メガネを送ったなんてストーリーで言ってましたか??

    自分は刑事がメガネの写真を遠くから見せるシーンで、みなみちゃんは遠く、つまり刑事の手元の段階で「メガネ?」って言ってる(視力がいい)けど、さゆりんは刑事が見せた段階では何も言ってない(視力が悪い)さゆりんは自分の手元に持ってきてから「メガネ?」って言ってるんです。
    そして、目がいいみなみちゃんは目が悪いと嘘をついてる。この話で嘘をつくということは、誰かを庇っているということだと思うのでさゆりんが犯人だと思いました。庇っていたのはみなみちゃん。

    • コメントありがとうございます。筆者のOkabeです。
      写真を遠くで見分けているか、近くで見分けているかの違い。
      これはなるほどと思う視点でした。
      他にも同じような推理が寄せられています。
      注目ポイントなんだと思います。

      この推理に対しては、一つ気になる点があります。
      『遠くのものが見える』=視力がいい。これは正しいのですが、
      『視力がいい』にも二つの場合があって
      『裸眼視力がいい』と『矯正視力がいい』があるのです。
      つまり、『みなみちゃん』がコンタクトを付けているという可能性を考えなければいけません。
      この可能性は否定できない可能性と思うのですが、いかがでしょうか?

  3. コメントを頂きました。ありがとうございます。
    せっかくコメントを頂いたので、写真に関してもう一つ。
     
    2人の写真の持ち方が違います。
    『みなみちゃん』は横
    『さゆりん』は縦
    にして写真を見ています。

    これ、二人は同じ写真を見ているんでしょうか?

    二人は違う写真を見せられている。
    その差が台詞の差に出ている
    という推論も可能なわけです。

    ただ、だから何に繋がるのか?
    は現時点でボクはわかりません。

    こういった疑問を解決しながら、
    答えを探っていく、それが、『読者への挑戦状』の面白さです。

  4. 私はみなみちゃんが犯人だと思ってました。
    この2人は自分を犯人だとしたい。
    ありのまま正直に答えれば犯人になるのに不都合は生じないはずで、
    庇う側は返答次第で犯人ではなくなる可能性がある。
    だから単純に、「嘘はついてない」スラスラ答えたみなみちゃんが犯人で、
    答えにつまる、答えないさゆりんが庇っているのかなと思いました。
    また、ルームメイトならお互いの視力を知っているのが自然で、庇うなら犯人は視力がいいとしたいはず。
    どこかでそうもっていこうとするだろうとみていたら、さゆりんがフレームだけかも発言をしました。
    わざわざフレームだけと言及=犯人は視力がいいという印象操作。
    これによりみなみちゃんを容疑者から外し、自分の視力がいいとすることで庇うつもりが、
    刑事さんに自分の視力が悪いことを指摘され失敗するわけです。
    2人が見せられた写真は別の写真で、乃木坂の生写真でお馴染みのヒキとヨリみたいな感じで、
    ミスリードを狙ったものかなと思いました。

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