まずは東京メトロ千代田線・乃木坂駅の発車メロディが「君の名は希望」に決まったことを讃えたい。
CD買って、グッズ買って、握手して、ライブでコールする。それ以外の応援の選択肢を見出した有志たちの粋な計らいには非常に感心させられました。しかし駅名との親和性、発車メロディとしての用途で考えるならば個人的には「乃木坂の詩」を推したかった。
ここで問題提起したい。あまりにも「君の名は希望」に全てを委ね過ぎていないかい? 杉山勝彦にピアノから始まるイントロばかりを求め過ぎていないかい?
「今、話したい誰かがいる」。これはそんな現状を良しとしなかったAkira Sunsetからの明確なアンサーだ。
「君の名は希望」と同じBPM140、印象的なピアノのフレーズから始まり、四つ打ちのビートは「命は美しい」を経由したことで上品さと迫力を兼ね備えたサウンドプロダクションを手に入れている。
サウンド面から読み取れるのは前述した問題提起と同種の皮肉、そして「俺にだってできるんだ」という誰もが認めるクラシックへの挑戦意識だ。
ではリリックはどうだろう? 曲の中で描かれた主人公はもしかしたら秋元康の中では生駒里奈から西野七瀬へと移り変わっているのかもしれないが、ここでは同一人物である前提で話を進めていく。
「君の名は希望」においては「透明人間」と呼ばれていた主人公が恋を知ることで変わっていく自分を自覚するストーリーがあった。
それからどのくらいの月日が経ったのだろう。「今、話したい誰かがいる」は「一人でいるのが一番楽だった」という独白から始まるように、一人では生きられなくなったかつての透明人間の現在のストーリーだ。
「今までならきっと逃げてただろう、君のことを失うのが怖い。」誰かを恋しくなる自分すら想像のつかなかった過去を持つが故の葛藤がここにはある。
もしかしたら二つの曲における主人公は同一人物ではないのかもしれない。だが、自分と似ている、だけど自分ではない誰かとの対話、そしてそこで生じる摩擦こそがアイドルとオタクの関係性だ。
そんな関係性を最も的確に表現したのが下記のパンチライン。アイドルはファンがいないとアイドルでいられないとよく言うが、お互い様。ファンはアイドルがいなければファンでいられない。一人のオタクとしてそこだけは勘違いしたくない。
「それが恋と知ってしまったなら こんな自然に話せなくなるよ だから僕たちは似た者同士 気の合う友達だと思ってる」
(文・Mr. Tambourine Man)
https://www.youtube.com/watch?v=trXbum9cz9g
作詞 秋元康/作曲・編曲 Akira Sunset、APAZZI
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