最近、性同一性障害(Gender Identity Disorder、GID)の話題がありました。最高裁まで争われた裁判で、「性同一性障害のため女性から性別を変更した男性と妻が、第三者の精子提供による人工授精で妻が産んだ子供の戸籍上の父親を、その男性と認めるよう求めた裁判」です。
「人工授精」という問題もあり、この問題を語るのは非常に難しいのですが、ただ一つだけ言えることがあります。最高裁の裁判官5人中3人が訴えを認める意見、2人が反対の意見を述べました。意見が割れた判断だったという事です。という事は、この判断は国民の間でも議論すべき事なんだろうと言えます。
そして、議論するためには、その根底(の近いところ)にある問題を知らなければいけない、当たり前の事です。ちょうど、乃木坂46「バレッタ」TypeAのDVDにはこのGIDを題材にしたPVがあるんですね。今回は堀未央奈さんのPVを取り上げます。
個人PVとはメンバーの魅力、個性などをファンに伝えるためのツールの一つです。ただ、前回(乃木坂散歩道・第85回「何人目の万理華?」参照)取り上げた伊藤万理華さんのPVの様に、哲学性、社会性、芸術性などを組み入れて、メンバーの魅力を伝えるという価値以上のPVを作り上げることも可能です。堀さんのPVは、GIDという問題を上手にリンクさせて、堀さんの魅力を表現するだけではなく、社会性のあるPVになっていると思います。
以降の文章は一度は堀さんのPV本編を見終えてから読んでください。
登場人物を簡単におさらいします。「MILK」に登場するのは、新聞部員の堀さん。堀さんからインタビューを受ける同級生の長野さん(秋月三佳)。この2人です。
まず。劇中でGIDについて表現されていることを読み取ってみたいと思います。このPVはミステリーの要素を取り入れています。叙述トリックというやつです。
長野さんは最初、『男子』です。そう思ってみていると、ある瞬間でハッとさせられます。そして、次のセリフがこのPVでGIDについて伝えたい重要なポイントだと気づきます。
「あなたも、私を見ようとしていない。気付いてる? まだ私と一度も目が合っていないよ」
GIDについて、長野さんについて、みんなに知ってもらおうと、良い事をしているつもりの堀さん。でも、堀さんの言葉は長野さんにしてみれば「失礼な」言葉。(好奇の目ではなく)『ちゃんと見て欲しい』、それがこのPVからのメッセージです。
次に堀さんの魅力の表現を読み取ります。堀さんの魅力って何でしょう? まばたきがよくわかる大きな目ではないでしょうか。その彼女の目に注目が集まるシーンがあります。それも、「あなたも、私を見ようとしていない。気付いてる? まだ私と一度も目が合っていないよ」のシーンです。『彼女』と目を合わせようとする目、問題に向かい合おうとする目、真摯な目、印象的な目、このシーンはGIDの問題と堀さんの魅力の表現とがちょうどクロスするシーンなのです。
その後、二人の会話が始まります。堀さんと長野さんの会話ではありません。この会話は、堀さんの意志表明です。
「名前は 堀未央奈」
「年齢は 17歳」
「将来の夢は 大勢の人の前で歌うこと」
「その為に嫌な事言われたりされたりしても、そういうの乗り越える自信はある?」
「長野さんは? だってこれからも(好奇の目で見られるのに)」
「自信があるかわかんないけど、覚悟はある」
2期生センターという好奇の目でも見られてしまうポジション。堀さんはそのポジションに立つ自信はまだないけど、覚悟はある。そう伝えたいのかなと思いました。
『好奇の目』、『偏見の目』、僕自身もどうしても持ってしまう『目』です。『性同一性障害』も『2期生センター』もその『目』で見られます。でも、その『目』に立ち向かおうとする二人の姿を眩しく表現したPVが、堀さんの個人PV「MILK」です。
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僕もはっとさせられました