これまでに何作か個人PVを紹介してきました。個性のあるもの、哲学性のあるもの、社会性のあるもの。作品を考察するにあたり、僕が最も苦手とするのが『芸術性』です。元々、その方面のセンスが無いと自覚しています。
という事は、7thシングル「バレッタ」の個人PVで、僕自身が最も理解できないものが『芸術性のある(強い)』作品なのではないか? そんな考えの元に再度見てみたのです。
僕が今回の個人PVで、何度見ても意図がつかめなかったもの、それは桜井玲香さんの「City Lights」(岡川太郎監督)でした。このPVでは桜井さんの声が入っていません。声ってその人の個性や魅力の一要素だと思います。その声を排してまで表現したいことって何だろう? そんなところから、このPVの理解に躓いていました。
理解に窮したので、「City Lights」という単語をネットで検索してみました、何かヒントでもあればという気持ちで。たどり着いた先は、チャップリンの映画『City Lights』(1931)でした。モノクロームで音楽だけの無声映画、内容はラストシーンが印象的なロマンチックコメディだそうです。何となく共通点があるので、この映画がモチーフなのかな?って考えました。
答えを求めた僕は、先日の「バレッタ」全国握手会神奈川会場で、桜井さん本人に聞いてみました。「『City Lights』はチャップリンの映画がモチーフ?」と。答えは「違う、そのような説明は受けていない」。ここでギブアップしました。自分で考えるのはここまでが限界。
City Lightsは「街の光」、このPVの撮影は街の光だけで撮った作品だそうです。このヒントをいただいて、監督の岡川太郎さんの言葉の意味がわかりました。公式サイトのクリエーター紹介のページから、岡川監督のコメントを引用します。
”東京の夜。街の光と彼女。僕らが用意したのは被写体に見合う素晴らしいレンズを数本と青のジャケット。”
これで「City Lights」が少し理解できました。通常の撮影で使用する光源を排し、街の光だけで桜井さんを映す。そこに見えてくるのは「クール」な桜井さん。無声にしたのは映像を強調するためなのかもしれませんね。
桜井さんの魅力を引き出すために、本来使われるべきもの(光源)を排し、本来あるべきもの(声)まで排す。PVの構成要素をそぎ落としていく中で、逆に桜井さんという素材を際立たせる、そんなPVが「City Lights」です。
芸術作品とは、『素材』、『技術の駆使』、『想い』との組み合わせです。桜井さんの作品は「バレッタ」の個人PVの中で、最も芸術性を持ったPVと言う事が出来ると思います。この知識を得てもう一度桜井さんの個人PVを見てみると、何もわからずに見ていたPVとは違う世界が見えてきます。
それにしても、今回の7thに収められたPV、MVにおいて、桜井さんは、ふり幅が大きいですね。「そんなバカな…」とのギャップが凄いです。そんな多面性が彼女の魅力のポテンシャルであり、個性なんだと思います。
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玲香のPVはもう理屈ではなく 感性で観るようにしました
それは絵画を観る感覚に似ているかもしれません
あのような音と映像の空間的な作品は感じるか感じないかのところで勝負しているのだと思います
その中に玲香が何とも言えない存在感で存在している
抽象的に言えばそんな感じでしょうか