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乃木坂散歩道・第214回「乃木坂クライシス・3人のプリンシパル」

 『プリンシパルって、なに?』
 そんな事を考えながら、AiiA 2.5 Theater Tokyoに向かいます。

 2017年2月12日、僕は最初で最後の「3人のプリンシパル」を観劇しました。3期生に関して言えば、比較的フラットな状態で参加出来たと思います。取り立てて推しメンがいるわけでもなく、逆にマイナスのイメージもない。興味があったのは『プリンシパル』。およそ2年半ぶりの公演は僕に何を見せてくれるのか?
 たった一度の観劇でのこの記事です。『3人のプリンシパル』の深部には到達できないかもしれませんが、お付き合い願えればと思います。

 まず最初に言いたいのは、「心が動いた」という事です。乃木坂ファンとして、久しく感じていなかった事です。
 僕は乃木坂ファンです。だからこそ、乃木坂46の情報を日々たくさん浴びています。今、乃木坂は上り調子で、情報はあふれています。だから、ファンとしても『慣れて』しまっているのかもしれません。ちょっとしたサプライズでは、既に『心が動かない』。

 だけど、たった一度だけの観劇でしたが、『3人のプリンシパル』を観て心が動きました。僕が行ったのは12日の昼公演です。ラス前の公演です。3期生にはだいぶ『慣れ』があるかと思いきや、全員、ガチガチに緊張しています。そんな姿を見ることが出来るとは思ってもみませんでした。『紙一重』だったと思います。『狂気』、『崩壊』という彼方に紙一重だった様に思います。

「プリンシパルって、なに? #1」

 僕にはいくつかの答えがあります。
 一つ目は、『プリンシパルは人生の縮図』です。

 梅澤美波さん。インフルエンザで最後の土日は休演となりました。乃木坂メンバーとして初めての舞台、どれだけ準備をした事でしょう。残念ながら、僕は彼女の姿を見ることは出来ませんでした。
 人生は時に『不条理』です。どれだけ努力して、頑張って、高い志を持っていたとしても、病気や事故は、全てを『無かった事』にしてしまいます。僕が楽しみにしていた舞台「3人のプリンシパル」でも、『不条理』がありました。小さな『不条理』かもしれませんが、もう取り戻せない時間です。

 吉田綾乃クリスティーさん。3期生12人の中で唯一、2幕に出られませんでした。本来特筆すべき事ではありません。当たり前の事です。努力をしたものが全て報われるわけじゃない。その『現実』はわかっています、わかっているけど、僕はその現実を見過ぎています。せめて、『乃木坂』という世界では、努力する者は報われてほしい。非現実を見せて欲しい。そんな風に思っていました。

 僕が見た吉田さんを書きます。自己PRでは乃木坂楽曲から「きっかけ」の2番のサビをアカペラで歌いました。その歌詞に自分の気持ちを乗せたのでしょうか。「決心のきっかけは、未来を信じること」。演技審査では、『設定』が上手でした。カムパネルラ役の追加設定に「ヒロイン」を選んで、お嬢様風に演じました。
 吉田さんがとりたてて他のメンバーよりも劣るという事は断じてありません。にもかかわらず、2幕に出られない。
 世の中は『格差』であふれています。その格差には努力や実力だけでは覆しきれない『何か』が関わっています。3期生はまだスタートしたばかりで、『2幕選出無し』という結果になってしまう程、差があるのだろうか? そう思いはするけれど、一方で、そのはっきりとは見えない『格差』もまた『人生』なのかもしれない、そんな思いを抱きました。
 吉田さんのプリンシパルでの結果は、ファンに『現実』を強烈に突き付けました。努力だけでは語れない、人生を左右する『何か』を僕は感じずにはいられないのです。たかがエンターテイメント、たかが舞台、されど、この『リアリティー』。

 「プリンシパルは人生の縮図」。だから、心動かされるのです。

「プリンシパルって、なに? #2」

 プリンシパルとは? 僕が考えるもう一つの答えは、
 「プリンシパルとは仲間」です。

 12日昼公演で、ジョバンニ役として岩本蓮加さんが2幕初選出されました。その時のメンバーたちの喜び様は僕の想像を超えていました。誰かが選出されれば、誰かが落ちるわけです。何故、ライバル関係である他のメンバーの選出をあそこまで喜べるのだろう? たぶん、ライバルであると同時に『仲間』だからなんだと思います。

 この関係が現実世界ではとても難しい。利害関係にある人を『仲間』には出来ません。だから僕はプリンシパルを羨望の眼差しで見つめるのです。

「プリンシパルって、なに? #3」

 「プリンシパルとは乃木坂らしさ」
 今回、久しぶりにプリンシパルを観て、忘れかけていたものを思い出させてくれました。初心、ひたむきさ、必死さ、悔しいと思う気持ち、後悔したくない気持ち、諦めかけた心をもう一度奮い立たせる事、その時その時の全力。

 僕が乃木坂ファンを続けるのは、彼女達を見ていると、その感情を思い出させてもらえるから。中でもプリンシパルは様々な感情入り乱れる舞台で、より強く、忘れかけていたものを意識させられました。

 彼女達の姿を観ていると、心動かされ、そして、自分も頑張ってみよう、そう思わせてくれます。この感情の動きを引き起こしてくれる彼女達のひたむきな姿が、僕にとっての『乃木坂らしさ』ではないかと思います。

「それぞれのプリンシパル」

2月12日昼公演の印象を、敢えて簡潔にまとめます。

伊藤理々杏:表情で魅せる演技
岩本蓮加:逆境を言葉にできる力
梅澤美波:人生の理不尽
大園桃子:言葉は苦手、仕草で演じる
久保史緒里:超個性派女優
阪口珠美:サソリへのこだわり3選出/10立候補
佐藤楓:不器用さの魅力
中村麗乃:天然+想定外の正統派女優
向井葉月:愛され敢闘賞
山下美月:超激情型女優
吉田綾乃クリスティー:人生の縮図、現実と非現実
与田祐希:緊張感での極限状態

たった一公演観ただけですが、沢山の魅力を見つけることが出来ました。それを文字にするには、あまりに膨大になりそうなので、圧縮して一言にまとめました。

「乃木坂クライシス」

 『クライシス:危機、重大局面』 この言葉は昨年の3期生の「お見立て会」の時から意識していました。3期生が乃木坂メンバーとなる事で、乃木坂46は間違いなく変わります。人数が増えるとか、表面上の事だけじゃなく、『勢力図』が変わります。『古き良き時代』が消し飛ぶと思います。そう思う位、3期生の輝き方が凄い。

 「いつまでも変わらずにいて欲しい」 その僕の願いは打ち砕かれるでしょう。おそらく夏の18thシングルから『混沌』が始まります。そう思う位、3期生のスピード感は想像を絶します。3期生が今持つ『力』は『劇薬』です。『いままで』を大きく変えてしまう『劇薬』です。勿論、乃木坂全体として良い方向に変わるのだけれど、全てが(個々のファンにとって)良い方向に向かう訳じゃない。誰かが選ばれる時、誰かが選ばれないのです。光当たる場所には、必ず影が出来るのです。僕はこの状況を『クライシス』と表現したいと思います。

 だけど、もう薬は投与されてしまいました。3期生の『乃木坂入門』程度のイベントかと思っていた「3人のプリンシパル」が、ここまでのうねりを起こすとは、思いもしませんでした。ダイナミックな変化は、もう既に始まっているのです。

 「乃木坂クライシス」 乃木坂3期生メンバー他、「3人のプリンシパル」を創り上げた全ての関係者の方々への敬意を、敢えて「クライシス」という言葉で表現させていただきます。

 素晴らしい舞台でした。BRAVO!!!

筆者プロフィール

Okabe
ワインをこよなく愛するワインヲタクです。日本ソムリエ協会シニアワインエキスパートの資格を持ちます。乃木坂との出会いは「ホップステップからのホイップ」でした。ファン目線での記事を書いていきたいと思います。(ツイッター「Okabe⊿ジャーナル」https://twitter.com/aufhebenwriter

COMMENT

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  1. レポート、ありがとうございます!

    僕は2月6日の舞台を鑑賞しました。

    筆者さんが言う「心が動いた」は僕も感じました。
    3期生メンバーの初々しさ、ひたむきさ、意気込みに心を動かされました。
    乃木坂1期生初期にも初々しさは感じたのですが、それとはまた違った、言葉ではうまく言えませんが、3期生メンバーのエネルギーというか魅力を感じました。

    第1幕では彼女たちの魅力にすぐに引き込まれてしまいました。

    第2幕は、演技の完成度の高さに驚かされました。舞台として十分通用するレベルで(他の舞台を見ているわけではありませんが)、普通に舞台を楽しむことができました。

    第3幕のミニライブも盛り上がりました。

    とても楽しかったです。

    3期生には今回のプリンシパルという、3期生だけで表現、パフォーマンスをする機会があって、よかったと思いました。
    これから正規メンバーと合流したときに、どんな変化をするのか、混乱は避けられないでしょう。楽しみでもあり、不安もあります。僕自身は、3期生で一つのユニットとして活動できて、例えば欅坂46の「けやき坂46」のように、グループ内別ユニットのような形で活動できたら平和に混乱なく維持できるのではないかと思いました。でも、そんなことゆるされないだろうな~

    • >グループ内別ユニット
      面白いアイデアですが、乃木坂が分裂してしまうのでは?という心配もありますよね。
      いつか合流することを考えると、さゆりんご軍団みたいな自然発生的なグループ程度に
      留めたほうがいいような気もします。

    • 言われていることは良くわかりますが、けやき坂はほぼ欅坂と同世代の派生グループなので別活動できます。(というか、看板にアンダーを付けてしまった為に活動に制約を受けて困ってしまったので欅坂にはアンダーの名は使わず別名にしたと思ってます)
      しかし3期生は近い将来卒業して行く1、2期生の後を継ぐという使命を持たされて誕生しているので多少の確執があっても仕方ないと思ってます。年齢も違いますしね
      逆に3期生はそれくらいの強さも持っていないと世代交代して行けないのではないでしょうか?勿論無くて済むならそれが一番良いのですが

  2. 吉田さんはリハを除いて全公演すべてカムパネルラに立候補してましたね。その一貫性というか、頑固さというか、強さを感じました。今回は努力が報われない形になりましたが、必ず今後に活きて来ますよね。
    演技では久保さん、山下さんが飛び抜けていた感がありましたが、全員個性を出して本当に頑張ったと思います。
    欅坂にいては決して得られない素晴らしい経験を積んでくれて、乃木坂メンバーとして一歩進んだ彼女達にこれからも注目ですね。
    バスラに出てくれると思うので、それも楽しみ!

  3. 昨年12月のお見立て会で初めて三期生を見てから、三期生の勢いを感じていました。
    そして11日のプリンシパル昼公演を見て、「こりゃすごいことになるぞ」と鳥肌が立ちました。

    何というか、結成から一期生が作ってきた「私立のお嬢様高校」「控えめで清楚」なイメージの上に他を寄せつけない圧倒的なアイドルとしての魅力・即戦力性。
    まるでデビューして2~3年経っているんじゃないかと思わせるほどの仕上がり感。

    18thからは確実に三期生のうち何人かは選抜入りするでしょうね。
    でも苦労してやっと掴んだ選抜の席を呆気なく三期生に譲ることになるメンバーのことを考えると、「こんなことあっていいのか?」と納得できない感情が湧き上がるとともに、三期生の選抜入りでさらにパワーアップした乃木坂を見てみたいという期待感も膨らみます。

  4. 読ませていたたきました。僕は3年前のTroisだけ観に行ったことがあるのですが、同じように理不尽や不条理を感じました。今回は観に行けなかったですが、いい意味で乃木坂が変わる・次のステップに進んでくれることを望んでいます。3期生の未来が明るいものであるのは、グラビアや雑誌のインタビューなどからも感じます。僕はななみん推しなので来週以降乃木オタなのかどうか自分でもわからない状態ですが …

  5. 9日のジョバンニ:山下さん、カンパネルラ:久保さん、サソリ:阪口さんのほぼベストの組合せの回に観劇しましたが、じょしらくや墓場、女子高生や犬天といった舞台における先輩たちの演技と比べて、まだまだ見劣りするという印象でした。半面、一つの舞台の中でもどんどん演技が良くなっていて、さらにお見立て会のときよりも格段にライブパフォーマンスは進化していて、その成長の速さに驚かされました。この3期生の成長を見て、1期生と2期生が同じように頑張れば、乃木坂46はこれからも成長していけると思います。

    逆に、先日の欅って書けないの土生さんの演技が、声も小さく表情も微妙であったことを見て、欅坂46の行く末に不安を感じ、楽曲リリース以外の展開の必要性を感じました。

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