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「乃木坂をよむ!」〜「5th YEAR BIRTHDAY LIVE」は何が新しかったのか?〜

乃木坂46のデビュー5周年を祝う今年のBirthday Liveは、さいたまスーパーアリーナにて3日間(2月20日~22日)に渡って行われました。初日には橋本奈々未の卒業コンサートがありましたが、残念ながらそこは行けず私は3日目のみの参加でしたが、この日だけでも約4時間という大ボリューム! お腹いっぱいで色々書きたいところですが、正確かつ細かいレポートはその他のメディアさんにお任せして、ここではちょっと違う視点から今回のライブは何がすごくて何が楽しかったのか振り返りたいと思います。

会場にて筆者撮影

さいたまスーパーアリーナに届いた花

会場となったさいたまスーパーアリーナでのライブはグループにとって今回が初。この会場はコンサートの規模に合わせて座席数を増やすことが可能で、今回は最大約37,000席のスタジアムモード。さいたまスーパーアリーナでライブをやっているアーティストは多くいるものの、スタジアムモードでやるのは稀なケースです。Birthday Liveとしては、デビュー2周年を記念した2014年の横浜アリーナ以来の屋内会場でのライブになりました。

祝花が今年もたくさんありましたが、お花一つとっても乃木坂46の心使いを感じることができました。多くの場合、祝花は気を使う順に一番見えやすいところに置いていくのですが、全体を見ると手前からテレビ→ラジオ→雑誌といった順番の中、2つだけ例外がありました。テレビ局はチャンネル順で並べるので普通ならNHKの番組が先に来るのですが、それを飛び越して飾られていたのが「MUSIC STATION」(テレビ朝日)でした。そして「Mステ」のさらに手前、つまり全体で一番手前に飾られていたのが、「バナナマン」のお花でした。どの媒体よりも一番に気を使うべきは公式お兄ちゃんである「バナナマン」だという乃木坂46の気遣いに少し震え、感動しました。

巨大なLEDスクリーンはライブの何を変えたのか

開演前、会場に入ってまず驚いたのはわりとステージがシンプルに見えたことです。乃木坂46のライブは美しい美術で飾られているイメージで、これまでのBirthday Liveなんかはバースデーケーキなどがステージセットにあしらわれていたこともあったので、エンドステージもセンターステージも花道もシンプルに見えました。

ところが、オープニングからとにかく度肝を抜かされました。恒例の「OVERTURE」からライブは始まり、メンバー紹介の映像が流れるのですが、ステージはLEDスクリーンだらけ。しかもセンターと上下(かみしも)のスクリーンでそれぞれ異なるメンバーの紹介映像を流し、その他のスクリーンで別映像を流してしまう。思わず唸りました、同時に何種類の映像出しをしているんだと!

ライブが始まってこれまでのライブとの大きな違いは「映像」です。乃木坂46のライブの際にスクリーンに映るのは、ライブ中のメンバーの顔が多いです(通称:生カメ)。そんなの当たり前なのですが、その分、各楽曲用に制作された映像のスクリーンが小さかったりだいぶ上空にあったりとおろそかになっているのが以前から多いように感じていました。生カメの映像は遠くの席の人がメンバーを見るために必要不可欠ですが、せっかくのクオリティーの高い映像を持て余している感がどうしても否めませんでした。

しかし今回は、ステージに乃木坂46マークをちりばめつつも装飾物は少なく、中央も可動式のスクリーンが現れるとステージ全てがスクリーンになるようなステージセットになっていました。いつもは派手に電飾がちりばめられている階段も、シンプルで映像を邪魔しないようなデザイン。全面LEDスクリーンのセットにしてメンバーが映像を背負いながらパフォーマンスすることで新しい見せ方が多く見られたライブになったと思います。

まず、3日目のステージの映像で驚いたのは、「今、話したい誰かがいる」。映像には、歌唱メンバーの別撮りのリップシーンが映し出されました。乃木坂46のMVは物語仕立てのものが多いので、意外とリップシーンが見られることは少ないように思います。個人的にリップシーンで思い出すのは「制服のマネキン」のMV。その頃に比べたらリップシーンひとつとっても格段に表現力が増したなと感じました。

また、「ぐるぐるカーテン」では「1st YEAR BIRTHDAY LIVE」の際の同曲のパフォーマンス映像が流れました。これは単純に過去を懐かしく感じたり、現在の成長を際立たせるだけではなく、しっかり振り付けを踊ってパフォーマンスしてる姿を映像で見せつつ、目の前のメンバーたちは花道を移動し、センターステージに輪を作ってパフォーマンスするという2つの見せ方を同時に可能にしました。

今回、ライブ全体の演出として煽って盛り上げるよりもしっかり曲を見せることに徹していたため、しっかり振り付け通り披露されてはいたものの、「シャキイズム」や「ハウス!」といった盛り上がる曲が普段は煽りのための曲として振り付けがおろそかにされて消費されているという議論はまだ残っています。今回の「ぐるぐるカーテン」の演出は、その議論をクリアにするヒントになるかもしれません。

振り付けといえば、初期の振り付けの多くを担当した南流石の残してくれたものの素晴らしさを改めて実感することができました。今回のライブでは、中盤に登場した3期生が「ハルジオンが咲く頃」「白い雲に乗って」「ハウス!」で初々しいパフォーマンスを披露してくれました。デビュー時の1期生がそうであったようにダンスの経験が少なくても可愛く見えるようなダンスは3期生を輝かせます。しかしそれだけではなく、パフォーマーの表現力が増せば増すほど、ダンスの持つメッセージが伝わってくる、これが南流石の振り付けの真骨頂なのだと1,2期生のパフォーマンスが感じさせてくれました。

話を戻しましょう。映像を背負ってパフォーマンスすることの一番の面白さは、曲に合わせて瞬時に世界を変えたり繋げたりできるところにあります。WHITE HIGH(白石麻衣・高山一実)による「渋谷ブルース」で埼玉から渋谷に連れて行かれたと思ったら、今度はいきなり宇宙の旅へ。「シャキイズム」を久しぶりに振付通りに見られたと思ったら、さらに宇宙を彷徨い「他の星から」に突入。宇宙や星つながりで、今度は「あらかじめ語られるロマンス」に続くのかと思いきや、スクリーンにはいきなり美しい花々が咲き乱れ「初恋の人を今でも」が始まります。美しい映像と、圧倒的な可愛さをもつ星野みなみによってあっという間に曲の世界に引き込まれてしまいました。

また、「何もできずにそばにいる」~「その先の出口」では、窓の映像を起点に、前者では窓の外の世界を見せ、後者では窓そのものを鮮やかなステンドグラスにして流れのなかで違いをつけたり、「なぞの落書き」~「傾斜する」~「誰かは味方」では教室を起点に映像を展開するなど、楽曲それぞれに繋がりはなくても映像演出を加えることでストーリーを作り新しい見せ方を提示してくれました。Birthday Liveでは「全曲披露」という大命題があるため、様々なジャンルの曲を次々に見せていく難しさがあります。それを今回のライブでは、映像を使って強引に切り替えたり、ストーリーを作って流れを生んだりしてクリアにしていました。

こういったライブの面白さは、「ヒキ」の映像よりもメンバーへの「ヨリ」の映像がどうしても多くなるDVD、Blu-rayでは存分に楽しむことができないかもしれません。そういう意味では、ただでさえチケットが取れないライブに「生で見ないとわからない面白さ」という新たな付加価値がついてしまいましたね。

「チーム乃木坂46」の未来

今回は映像だけでなく、とにかくステージセットが一新された印象でした。センターステージの回転する円形リフターは過去のライブでもおなじみですが、花道の先に仕込まれたリフターの数には驚かされました。メンバーを上空に運ぶゴンドラも、アイドルとは程遠い存在だった橋本奈々未が元の世界に帰っていくためにあったかのような機構だったと思います。ライブ時間の長さと大きな会場に対応できるよう、機構を使って上下に手前に奥に視線を変えて飽きさせないようにするという意図が感じられました。また、上下(かみしも)のムービングステージはトロッコではできない、ダンスしながらファンに近づくことを可能にし、「光合成希望」や「低体温のキス」で使われた高速移動ステージは曲の疾走感を表現する新たな武器になりました。忘れてはいけないのは、これらが人力であるということ。スタッフが安全に気をつけながら体をはってくれているのです。

3日目の本編ラストではオーケストラが登場(生田絵梨花はピアノから解放)し、「昨年の紅白衣装」で「3年前の紅白で歌えなかった」、「何度目の青空か?」を歌うというにくい演出もありました。大名曲「君の名は希望」を挟んで、本編ラストに歌われたのは2ndアルバム『それぞれの椅子』に収録された「きっかけ」。これまでのグループの歴史を作ってきたメンバーが卒業していき、今後卒業を見据えるメンバーが増えるなか生まれた、これからの乃木坂46の道標であり希望の一曲。オーケストラの温かく深い調べが、5年目の終わりと6年目の始まりを改めて感じさせてくれました。

今回、メンバーのパフォーマンスがどうだったという話はあまりしませんでした。その話は私以外の方がすでに十分にされていますし、逆にメンバーの話をしなくてもここまで乃木坂46のライブは面白いんだと私は伝えたいと思います。スタッフ含めた「チーム乃木坂46」が作るライブは今後さらに進化を続けてくれると確信させてくれたライブでした。そして、さいたまスーパーアリーナのスタジアムモードはやはり広かったですが、さらに広い東京ドームでのライブがますます見たくなるライブになったと思います。

最後に、「傾斜する」のアレンジ最高でした!!!

筆者プロフィール

ポップス
洋楽が好きで、「弁当少女」のOPがVampire Weekendで興奮していた類の人間です。
乃木坂46の物語や構造、楽曲について考察し、皆さんと乃木坂46をより深く楽しめたらと思っています。総合音楽情報サイト「Real Sound」にも乃木坂46のコラムを寄稿。

COMMENT

  • Comments ( 3 )
  • Trackbacks ( 0 )
  1. レポートスゴく面白く読ませて頂きました。乃木坂のコンサートに行ってみたくなりました。特にスクリーンに映し出される、それぞれの曲に対しての映像がどんなものなのか興味が湧きました。ありがとうございました。

  2. モノクロの映像が凄くカッコ良かったです!(2日目)

    二日目行ったんですが、神セトリでした!!

  3. テルミックと日本ステージの本気を見たといった感じでした

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