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選ばれることの怖さ、選ばれないことの怖さ~乃木坂工事中「14thシングル選抜メンバー大発表」を見て~

「乃木坂工事中」という番組は、普段は楽しい雰囲気で進んでいく。乃木坂46のメンバーが色んな企画に挑みながら和気あいあいとしている様を楽しむバラエティ番組だ。しかし、時々、スタジオの空気が緊迫して張り詰めたようになる。選抜発表の時だ。選抜に選ばれるか、アンダーとなるか。それはメンバーにとってもの凄く大きな差になる。もちろん、選抜に選ばれれば様々な可能性が広がっていく。選抜に選ばれることは、チャンスだ。

しかし、ただそれだけの単純なものでもない。チャンスを掴んだ、選ばれた側の人間にも、様々な想いや葛藤が生まれる。選抜メンバーであるということをどう捉えるのか。その点に個々人の差が大きく出る。言葉に惹かれる僕にとって、選抜発表は、普段とは違った形で「乃木坂工事中」を楽しめる回なのだ。

今回は2月に「乃木坂工事中」で放送された「14thシングル選抜メンバー大発表」を見て思ったことを書いてみようと思う。

(※編集注:本稿は、筆者が2016年3月に投稿した記事を再編集したものです。)

まず齋藤飛鳥から。
【前から選抜にいる人とか、お姉さんメンバーが色んな活動で頑張っているのに、私は何も出来ていない】
そう言って齋藤飛鳥は泣く。

乃木坂46メンバーの中で、2015年最も飛躍したのは齋藤飛鳥だ、という記述はよく見かける。主にモデルとして、女性誌やファッションブランドの専属として、齋藤飛鳥の露出は爆発的に増えたと言っていいだろう。「次世代を担う」という表現もよくされる。

しかし齋藤飛鳥は、そんな自分自身を「何も出来ていない」と語る。

自己評価が低い人間はいる。僕自身もそうだ。齋藤飛鳥も、きっとそうだろう。何があったのかは知らないが、小学生のある時から性格が一気に暗くなったらしく、人生に期待しない生き方が身についたという。

齋藤飛鳥は、「どうして自分が?」と思っているのだろう。

以前の職場にいた、とても可愛く、仕事もちゃんと出来る女の子が、「自分が良いと思っていない部分を褒められても全然嬉しくない」と言っていたことを思い出す。齋藤飛鳥は、もの凄く可愛い容姿を持っていると思うのだけど、恐らく本人はそう思っていないのだろう(そういう発言をどこかで見た記憶がある)。自分の容姿が嫌いなのか、それはよく分からないけど、少なくとも、周囲から評価されるほどのものではないと思っているだろう。それは自分の感じ方だから、他人がとやかく言うことでもない。「自分が良いと思っていない部分」を褒められている感覚なのだろう。

それは結構怖いと思うのだ。

自己評価の低さは、評価されることへの怖さに繋がる。齋藤飛鳥が、自分の容姿に自信を持てないと感じているとすれば、容姿で評価されることへの怖さは常に付きまとうだろう。自信があれば、それを磨くことにも躊躇がなくなるし、内面の意識が外面にも影響を与えるかもしれない。でも、その自信がなければ、周囲からの評価は刃のようなものだろう。

齋藤飛鳥にも、これで評価されたいというものがあるだろう。今は、モデルとして、つまり容姿が評価されている。それによって表に出られていることには感謝しているだろう。しかしそれは、自分自身では納得の出来ない評価のされ方なのだろう。でも、そうやって表に出続ければ、いずれ、自分が評価されたいと思うフィールドで評価されるようになるはずだ。頑張って欲しいものだなと思う。

次は、齋藤飛鳥と同じく「次世代を担う」と言われる星野みなみ。
【私には、他のメンバーのように強みがないのに、どうして選ばれてるんだろうっていつも思います】

詳しくは知らないけど、確かに星野みなみは、乃木坂46全体としての活動以外に、あまりこれと言った露出はないように思う。そういう意味で、自身を「強みがない」と評するのは、きっとそう間違ってはいないのだろう。

司会のバナナマンは、「かわいい、でいいんじゃない?」とフォローするが、「もう18歳ですよ」と、かわいいだけではやっていけないという自覚があるようだ。

僕は、「強み」というのは、意識して作るものではないような気がしている。もちろん、戦略的に自ら「強み」を生み出して打って出ることが出来る人もいるだろう。しかし、それが出来るのは一部の天才的な人だけだ。「強み」とは僕は、他者から見つけてもらうものだという風に思っている。自分が「強み」だと思っていないことが評価されることもあるだろう。

そういう意味で、「強みがないのに選んでもらえている」というのも、一つの強みだろう。もちろん、どうして選ばれているのか分からないという不安はつきまとうが、「強み」というのが他者から認められるものである以上、そこは受け入れるしかないだろう。

星野みなみは、握手会などでファンから、「ずっと選抜に選んでもらってラッキーだね」みたいなことを言われることがあると言う。それに対してバナナマンは、「そんなことを言ってる人間はクソだから気にすることはない」と返す。確かに、僕もそう思う。

次は、生田絵梨花。
【私は、強くプレッシャーを感じたり、考え過ぎたりするとダメになって何も出来なくなるから、感じすぎないようにのびのびやりたい】

バナナマンも驚いていたが、僕も生田絵梨花にはそんなイメージはなかったので驚いた。生田絵梨花は、どんな場面でもプレッシャーを感じず、自信満々で振る舞えるものだと思っていた。

生田絵梨花は、意識的に「感じないバリア」を作って、自分をコントロールしているようだ。一気に生田絵梨花に親近感が湧いた。なんでも出来てしまう天才だと思っていたのだけど、自分をコントロールする術に長けていたのだと知って、なんだか安心した気分だ。

しかし、こんな風にきちんと自分のことを自分の言葉で表現できるのはやっぱり素晴らしい。まだ二十歳前だということを考えると、凄いことだなと思う。

次は西野七瀬。
【しばらくずっと1列目に選んでもらっているけど、未だに何で自分が選ばれるのかと悩むこともある。でも、そんな自分を見て、頑張れます、勇気が出ますと言ってくれる人が増えたので嬉しい】

西野七瀬も、悩みながらアイドルをやっているという感じのする女の子だ。人見知りで積極的になれない自分を隠すことなくそのまま出して、そのままの形で受け入れられている。アイドルとしてはなかなか稀有なキャラクターだと思う。西野七瀬のような人間がアイドルとしてやれているということが、乃木坂46というグループの懐の深さみたいなものを発露しているように思えて面白いと思う。

最後は、初めてセンターに選ばれた深川麻衣。
【どういう理由で選んでもらったにしろ、みんなの足を引っ張らないように頑張りたいと思います】

深川麻衣は、この14枚目のシングルをもって乃木坂46の卒業を表明している。「どういう理由で選んでもらったにしろ」というのは、そのことを指している。

僕は、「卒業だからセンターに選んでもらった」と表現しなかったのは良かったなと思う。「どういう理由で選んでもらったにしろ」というのは、「卒業だからセンターに選んでもらった」ということを表現している発言なのだけど、それを直接的に言わなかったのは、「その責任を引き受ける」という表明だと思う。言い訳はしない、という決意なのだろう。センターに選んでもらったのは嬉しいけど、今は怖いという気持ちが強いです。深川麻衣はそう言葉を紡ぐ。バナナマンはそれに対し、これだけのメンバーが後ろに控えてるんだから、心強いでしょうと語る。

全体的に、「個人の力を乃木坂に返す」と主張するメンバーが多いことと、バナナマンの対応力が高かったことが印象的だった。2016年、乃木坂46はどんな活躍を見せてくれるだろうか。

(文・黒夜行)

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筆者プロフィール

黒夜行
書店員です。基本的に普段は本を読んでいます。映画「悲しみの忘れ方 Documentary of 乃木坂46」を見て、乃木坂46のファンになりました。良い意味でも悪い意味でも、読んでくれた方をザワザワさせる文章が書けたらいいなと思っています。面白がって読んでくれる方が少しでもいてくれれば幸いです。(個人ブログ「黒夜行」)

COMMENT

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  1. HKT48の宮脇咲良が以前のインタビューで「センターを2期生に取られてしまい、当時はなぜ自分ではないのかと悩みました。でもいざ自分がその期待される立場になったら、期待されることも大変なことなんだと分かった」とと言ってました。
    でも期待されずに暗闇の中で悩んでいるより、期待されてチャンスを貰って、そこから色々なことを感じ、悩み、考え、たくさんの失敗をすることがどれだけ経験になるかって考えたら、やはりどんなに辛くても期待された方がいいに決まってるんですよね。

    最近はアンダーでもそれなりに仕事が増えて、色々な経験をすることができますけど、選抜・アンダー関係なく、乃木坂全体として皆が成長できるようなことって出来ないんですかね・・・

    • 僕は、学校の運動会で順位をつけないリレーをする、というのに違和感を覚えてしまう人間なので、なんだかんだ競争的な要素は必要だよなぁ、と思ってしまう部分があります。

      でもおっしゃる通り、選抜・アンダー関係なしに全体が伸びていける方向性もあっていいですよね。なんとなく、「選抜」という仕組みに慣れた(慣らされた?)身には、それ以外のやり方を浮かべにくいところではありますけども。

      他のアイドルのことは分かりませんけど、乃木坂46の場合、「選抜の過程」が基本的に明確にされることはないので、そこに対する不安を覚えるのは分かる気もします。「何故、あるいはどの部分が評価されているのか分からない」というのは怖いだろうなぁ、と。それでもやっぱり、期待されることは大きな経験になるでしょうし、辛くても本人のためになるでしょうね。

      考え始めると難しいですね(笑)

  2. 今の乃木坂の空気は正直すごく悪いと思う
    メンバーが選抜もアンダーも皆んなで乃木坂と頻繁に言うのは現実はそうなってないからじゃないだろうか?
    少し前に何かのインタビューで知った話だけどスタッフがハルジオンは思い出作りのシングルにしようとメンバーに話したらしい
    でもそれも選抜だけの思い出作りでアンダーは蚊帳の外なんだよ
    スタッフがこれじゃ若い子たちがまとまるわけない
    選抜発表でマイナスなことばかり言ってるメンバーが多いのもそういう理由なんじゃないかと勘繰ってしまう

    • 確かに、現実にそうなってないから口に出す、という面はあるかもしれませんね。

      選抜という仕組みを無くすのは非現実的でしょうし、アンダーであるという事実がある種の原動力となる部分もあると思うので難しいなぁとは思います。乃木坂46は、メンバー同士の仲が良さそうに見えるところも魅力でしょうけど、そのことが、アイドルとしてやっていく上でいいことなのかも、なかなか判断は難しいでしょうし。

      選抜がより頑張ることで、アンダーメンバーにも光が当たるような場が増えていく、というのが、今の現実を踏まえた上での理想なんだろうなぁ、と。

  3. 私は選抜発表が行われる度に今回こそ「選抜・アンダー」方式が壊されることを期待していて、毎回ものの1分でその期待が打ち壊されている者です。
    5年目、14枚ものシングルを出しているのだから本当の意味での大きな変化を望んでいます。

  4. 正直 選抜発表の度に生駒が選抜なのは
    疑問で仕方ない アンダー推しではないが
    生駒はアンダーメンバーに明らかに
    人気で負けてる

  5. 確かに生駒は人気がないかもしれませんが、昨年の神宮などを見ても乃木坂というグループに貢献しているように、私は感じました。あのようなライブでの煽りをほかのメンバーはできるのでしょうか?人気では測れないものがあるように思います。

  6. 大人数グループにおいて選抜制度を導入することは仕方がないのかもしれません。選抜制度は競争原理を働かせてより魅力のあるグループにするために必要だと言われています。ただ、その大前提として競争が適正に行われていることが必要です。
    乃木坂は初期段階でABCの3段階に分けられてしまったように感じます。現在の一期アンダーはCグループとして適正な競争、すなわち同じ土俵で戦うことすらさせてもらえなかったのではないでしょうか。選抜メンバーと比較すると◇◇の点て劣るなどと言われてしまいますが、経験が少なければ劣るのは当然です。看板番組にも出演しないのに、外番組で活躍することが難しいのは当然です。そうすると彼女たちがBグループに昇格するためには握手人気を上げるしかないのでしょう。
    選抜制度は必要だとしても、1年間も固定してしまうほどメンバー間の魅力には差があるのでしょうか。あったとしても、それと作られた壁でしょう。ある程度の覚悟のもとで選抜を変動させていかないと、競争によってより強いグループにするという大原則が崩れると思います。

  7. 新しい楽曲ごとに参加する人選がなされる事に文句はありませんが、
    剪定基準も落選理由も全く説明無いまま行われる事、また、最近は
    大きなメンバーの変化も無い中、こうやってテレビに映し出す事に
    強く違和感を感じます。まあ、自分が応援する娘たちが全く選抜に
    縁がないので僻みと受け取られればそれまでですが。
    何年後かに彼女達が振り返った時に思い出したく無い黒歴史には
    させたくない。

  8. 運営を擁護する気は毛頭ないが、今年で5年目だし人気順で差が大きくつくのは自然な事で選抜が固定されてしまうのは仕方ない。
    選抜に不満がある人も多いんだろうけど基本的に人気がある人たちが選ばれるのは乃木坂に限った話ではない。
    特に乃木坂の場合は握手人気上位の人たちが財政面を大きく支えているのは否定しようもない事実だから。
    そういう人たちが選抜されて前に来るのは当然でしょう。

    運営の大きな過ちは初期から選抜やセンターを固定し過ぎてしまった事。
    活動期間が長くなれば選抜メンバーが自然と固定されてマンネリ化していくのは避けられないのだから、デビューから2年以内のバレッタくらいまでは人気に関係なく毎回選抜の半分入れ替えるくらいしていろんな可能性を試すべきだった。
    初期からどうしても選抜に入れなきゃいけなかったメンバーはせいぜい5人くらいなのに、毎回同じメンバーばかり選抜に入れて全くチャンスが与えられなかったメンバーが多過ぎた。
    その一方でものすごく人気があるわけでもないのに明らかに優遇され続けたメンバーも数名いて運営のやり方には疑問を感じずにはいられない。

    13thでやっとサンクエトワールというアンダーの少数ユニットを作ったけど遅過ぎる。
    初期からアンダーメンバーだけの少数ユニットがあれば人気事情はもう少し違っていたかもしれない。
    アンダーメンバーはテレビにも出られずユニット曲も与えられずスポットライトが全く当たらない状況でどうやって人気を出せと言うんだよと思ったはず。

    運営は最近特に西野がお気に入りのようでソロ曲与えまくっているが、その分を少数アンダーメンバーユニットに回してみたらどうかね?
    選抜2人+アンダー2-3人みたいなユニットも面白いと思うんだが。

  9. 選抜にしても、アンダーにしても、全て1期生を優先にしているように感じます。2期生は5人くらいしかメディアにだしていない。固定化しすぎ、、、。今や1期生の不人気メンより2期生のほうが握手人気もあるのに。いつまで研究生の扱いなんでしょうね。前に出たいと言っても所詮だしていない現実、、、欅坂のほうが、よっぽど扱い良いよね。

  10. みなさん、色んな考え方があって面白いなぁ、と思ってコメントを見ていました。

    僕の個人的な話をします。
    僕は、ファンになってまだ1年弱の人間です。それまでアイドルには関心がありませんでした。
    そんな僕が、乃木坂46のファンになった背景には色んなことがあるんですけど、
    「固定化された少人数のメンバーの露出が多かったから」という部分もあるかもしれない、とみなさんのコメントを読んでいて思いました。

    初めから、あれだけの大所帯のメンバーが入れ替わり立ち替わりで少しずつ露出していたら、
    僕はメンバーの顔も名前も覚えられず、乃木坂46というものにさほど興味を持たずに終わった可能性もあったと思います。

    ある程度固定化されたメンバーが、「乃木坂工事中」を始めとした番組や、あるいは各種雑誌に出ていたからこそ、乃木坂46にもアイドルにも興味のなかった人間の目に留まった可能性も否定は出来ないのかな、と。

    長くファンでいる方からすれば、色々と憤ったりヤキモキするような部分もあるんでしょうけど、
    新しいファンを取り込む、という一点だけで見た場合、固定化には利点があると言えるんだろうなぁ、と。

    選抜メンバーの固定化というのは僕も感じるところではありますし、
    メリット・デメリットはそれぞれ多々あると思います。
    運営の側が、意図的に固定化を目指しているのか、だとしたら何故なのか。
    あるいはそうではないなら、意図せずなってしまった固定化をどう解消する手を打ってくるのか。
    そういう点に僕は興味があります。

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