「聖地巡礼」という言葉があります。映画やPV、漫画、アニメなどのロケ地、またはモデルになった場所を巡ったりすることを指します。例えば、紀の善であんみつを食べるというのは、乃木坂ファンにとっては一度はやってみたい聖地巡礼です。CSフジ「ラーメンWalkerTV2」で乃木坂メンバーが訪れたお店に自分も行ってみたという報告も見られますが、これもやはり聖地巡礼です。
ちょっと変わったところでは、舞台「じょしらく」の期間中に、『ブラッディ・マリー』を飲んでいるという投稿もSNSでよく見かけました。同舞台で斉藤優里さん、松村沙友理さん、衛藤美彩さん演じる女性落語家『蕪羅亭魔梨威(ぶらてい まりい)』に影響を受けたものです。これもファン心理として聖地巡礼に近いものがあると思います。
今回の記事はその聖地巡礼に近いものとして、ドラマ「初森ベマーズ」(テレビ東京系)で衛藤美彩さん演じる『シェリー』をテーマとして取り上げます。役名としての『シェリー』の由来が何なのかは僕にはわからないのですが、単純に捉えるならば、お酒の『シェリー』なんでしょう。
「乃木坂工事中」(テレビ東京系)の一人家飲み企画をきっかけに、衛藤さんといえば、というくらい急速にそのイメージが広まりました。ノリの良い乃木坂ファンの皆さんなら、絶対SNS上で「シェリーを飲んでます」的な報告をすると思っていたのですが、未だ見かけず、寂しく感じたので自分で発信してみることにした次第です。
ここから先はかなりマニアックな記事になります事を御了承願います。
シェリーについて一言で説明するなら、白ブドウを原料とした『白ワイン』です。シェリーを飲んだ事がある方にとっては意外な事実じゃないでしょうか?
もう少し詳しく説明すると、世界三大酒精強化ワインの一つです(「酒精強化」とは、醸造過程でブランデー等のアルコールを添加すること)。シェリーはその中で、スペインで造られる、特殊な熟成過程(酸化熟成)を経た酒精強化ワインです。
実はシェリーには沢山の種類があるのですが、思いっきり簡単に3つに分類してみました。キーワードは『酸化熟成』と『糖度』です。
シェリーには『辛口』のシェリーと『甘口』のシェリーがあります。
そして、辛口のシェリーには『酸化熟成』を短期間しか行わないタイプと、長期間にわたり『酸化熟成』を行うタイプがあります。
以下に写真と共にその特徴を列挙します。まずは辛口のタイプから。
(注:この記事では大雑把に分けているので、本来の細かい分類とは多少異なります。)
1:フィノ − 短期間熟成タイプ
最もシェリーらしくないシェリーかなと思います。『シェリーらしさ』を引き出すのは『酸化熟成』です。その工程を短期間で終わらせているため、色合いとしては無色透明~軽く黄色みを帯びた程度となります。フィノを見ると、このシェリーが『白ワイン』である事に納得がいきます。
味わいとしてはシェリーの中では軽めです。ただ、酒精強化している分、白ワインというよりは、よりアルコール度数の高い、焼酎やウォッカの方に近い印象を受けるのではないかと思います。
2:アモンティリャード、オロロソ – 長期熟成タイプ
折角シェリーを飲もうと思われたのならば、是非、こちらの長期熟成タイプをお薦めしたいと思います。
熟成のための容器は『樽(たる)』が用いられ、『樽』由来の色素と『酸化熟成』由来の変化で、長期熟成のシェリーは『琥珀色』を呈します。
味わいを端的に表現すると『パンチ』と『コク』でしょうか。長期熟成しているので、白ワインにある新鮮な果実味や爽やかな酸味みたいなものは失われていますが、口に入れた瞬間に勢い良く広がる強いアルコール、そして、その衝撃が収まった後には、長大な余韻が続きます。
料理と合わせると、非常に面白い化学反応が得られます。シェリー自体の味が非常に強いので、『旨味』の強いタラバガニなんかは非常に良く合いました。
次に甘口のタイプを紹介します。
3:クリーム、ペドロ・ヒメス – 長期熟成・極甘口タイプ
甘口は長期熟成タイプしか見たことがありません。糖度が高いため、非常に粘度が高い液体です。色合いはやはり琥珀色ですが、非常に濃度の濃い琥珀色です。糖度が高いので、果実の味わいとしては、干しブドウのイメージとなります。それゆえ、バニラアイスクリームにかけると、『ラムレーズン』の味に近くなります。
用途としては、デザートワインとして用いられることが多いかと思います。甘口のシェリーには『あずき』のニュアンスが感じられるので、和菓子に合いそうなイメージがありましたが、繊細な和菓子は、シェリーに味が打ち消されちゃいます。やはり、濃厚なクリーム等を使った洋菓子と合わせるのが良さそうです。
本来、ワインにおいて、酸化する事は劣化と同義です。コルクを抜いてしまったワインは徐々に品質が低下します(数時間~数日で劣化します)。そのため、ワインには酸化防止剤を入れるのが普通です。
ところが、シェリーは違います。まず、熟成の段階で既に酸化させています。そして、製品となり個人の元に有っても、普通のワインとは異なり、保存は常温です。コルクを抜いても品質は低下しません。むしろ、コルクを抜いて、そこから質の向上が始まります。その期間は年単位で続きます(ちなみに僕が今飲んでいるシェリーは、抜栓して1年以上経過しています)。
酸化させればさせるほど、ワインの質は向上していくのです。
さて、ここから衛藤さんの話題になります。時に「ビー玉BBA(ババア)」と揶揄される衛藤さんですが、彼女は年を重ねている事をマイナスと捉えているでしょうか? むしろ武器にしているというのが僕の印象です。BBAであることが、乃木坂内における彼女の個性であり、武器です。
酸化=年を重ねること=BBA、劣化=質の低下=マイナスと考えるとき、衛藤さんはまさに『シェリー』なんです。一見マイナス要素に見える『BBA』を衛藤さんは個性に変え、尚且つ武器にしています。乃木坂メンバーにおいて、お姉さんキャラを確立し、衛藤さんだけが唯一『お酒』に関する発信をしています。例えば、舞台「じょしらく」での衛藤さんの落語では、自身に関して「可愛く酔っている」といった発言で、観客の笑いをとっていました。雑誌や情報番組でもお酒を用いた企画が組まれました。
13thシングルではついにフロントに立った衛藤さんですが、過去には辛い時期がありました。活動初期から人気が高かったにも関わらず、1st~6thシングルまでアンダーメンバー。7thシングルで念願の初選抜を掴んだかと思いきや、8thシングルでは再びアンダーメンバーとなります。この間、彼女はただ年を重ねるだけだったのか? それが違うことは皆さんご存知の通りです。彼女の年の重ね方は『酸化熟成』です。時間を経ても劣化することなく、質を向上させ、圧倒的個性を掴みました。
「初森ベマーズ」における役名が『シェリー』であることには、僕は大きな意味があると感じています。もしかして、ただの偶然だったり、特に意識しないで名付けられたのだとしても、『シェリー』の名前は、今までの衛藤さんがやってきたことが引き寄せた名前なんだと確信しています。
『シェリー』とは、実に力強い個性のあるワインです。普通ならば劣化してしまう環境においても、逆に質を向上させるワインです。
『シェリー』は美しいワインです。10年以上、場合によっては30年以上の熟成を経て造られる琥珀色の液体は、複雑で奥深い味わいがあります。言葉では表現しきれない魅力にあふれています。
そして、『シェリー』は多彩です。様々な環境で楽しめるワインです。食前酒、食中酒、食後酒、どの状況にも合ったシェリーがあります。
ワインというお酒は、ただ味を楽しむだけではありません。その液体に込められた『想い』も飲むものです。僕たち乃木坂ファンは、今後『シェリー』を飲む時は、衛藤さんを想わずにはいられないでしょう。それが、ワインの面白さでもあります。
1st~6thまでと8thシングルにおいて、アンダーメンバーとして頑張ってきた衛藤さんが、今、フロントメンバーとして立っています。その彼女の軌跡を思い浮かべながら、今宵は『シェリー』を楽しもうではありませんか!
こんなマニアックな記事を最後まで読んで下さってありがとうございます。最後まで読んだ皆さんは、衛藤さんのファンかお酒好きな方でしょう(笑) そんな皆さんは、『シェリー』の世界に、一歩足を踏み入れました。ここから先は、果ての無い世界です。だからこそ、面白い世界です。
そして、どうか覚えておいてください。
ワインには想いを込めることが出来ます。その想いはワインに壮大なストーリーを与えます。そのことを知った皆さんは、今までとは違うワインの世界を見ることになるはずです。
ようこそ! 深遠なるワインの世界へ!
ありがとうございました
シェリー、よくわかりました
飲んでみます
僕はお酒を飲めませんし、みさ先輩推しでもありません(^^;)
最後まで読んだのはOkabeさんの記事のファンだからですよ!!
いつも素敵な記事ありがとうございます。
乾杯ビールの一杯で一次会を乗り切るような下戸ですが、とても興味深く読ませていただきました。
ますますみさ先輩の活躍に期待ですね!
涙出そうになりました
素晴らしい記事ありがとうございます
下戸ですが、全文興味深く読ませて頂きました。
ベマーズの役名を聞いたときに、Bloody MaryとSherry
って お酒繋がりって BLOGにコメしました。
かみさんも酒飲みなので 女性の呑兵衛に まったく抵
抗ありません。みさみさは、ちょっと「泣き上戸?」な
のかなぁ?
お酒の話し、薀蓄はたくさんあって、いいですよね。
お酒にまつわる言葉、ことわざ、逸話、落語などなど
どれも興味深いです。
XXジョウゴとゲコ 漢字があって 家に関係してるって
知ったのは最近です。
その昔ビッグコミックスピリッツにホイチョイプロが軽薄そうな似非サブカル記事を書き散らしていた頃に
「ビストロでのアペリティフならキールかシェリーを頼んでおけば間違いない」なんて書いてあったことを
思い出した。
あの乃木坂工事中はおもしろかったなあ。最初白石に電話して次に深川に電話したがつながらずその次に電話したのはなんと齋藤飛鳥。一番最年少ながら衛藤らの話にもついていける情報量を飛鳥は持ってるんだろう。
そして郷土の偉大な先輩である南こうせつ氏を尊敬してるところも彼女らしかった。