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乃木坂散歩道・第176回「風の電話」

 最初に断らせていただきます。今日の記事は乃木坂とは全く関係ありません。でも、今日だからこそ伝えたいことがあります。それは、『忘れずにいること』。


 今日は3月11日――東日本大震災の発生から4年が経ちますが、まだ復興は完了していません。
 ただ、現地を訪れてみると気が付きます。町にはウンザリするくらい沢山のダンプカーが走っていました。何もしていないわけではない、被害が大きすぎたという事なのです。自然の脅威の前に、人間は無力です。

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 岩手県大槌町吉里吉里(きりきり)、元JR山田線、浪板(なみいた)海岸駅の高台より撮影しました。遠くに見える海岸沿いの松の木、下の方の枝がありませんが、それが町に押し寄せた津波の高さを物語っています。

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 浪板海岸駅の線路はまだ復旧の目途も立ちません。

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 本来は線路と鉄橋があった高台です。こんな高さまで津波の被害にあっています。

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 沢山の家屋が流され、被害にあった方々の多くが未だに仮設住宅での生活を余儀なくされています。

 そんな悲しみの場所に見つけた、一つの希望を紹介します。

「人の心を救うのは?」

 岩手県大槌町の吉里吉里・浪板地区に、こんな電話ボックスがあります。

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 携帯電話全盛の時代、電話ボックスは役目を終えて、数を減らしています。そんな時代に新たに作られた、電話線の繋がっていない電話ボックスです。

 その名前は「風の電話」

 中に入ってみると、こんな言葉が書かれていました。

「よく来たね! 待ってたよ」

「風の電話は心で話します 静かに目を閉じ 耳を澄ましてください 風の音が又は浪の音が 或いは小鳥のさえずりが聞こえたなら あなたの想いを伝えてください」

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 ここは亡き人を想う場所。突然の悲しみをどうしたらよいかわからない人達のための場所。
 いつまでも泣いているわけにはいきません。亡き人を忘れないでいられるなら、それでいい。
 前に進むために『言葉にする』。それがこの場所です。

「ようやく別れを告げられた」

「何も見えない。何も聞こえない。だけど、電話口の向こうにあの人がいるような気がする」

 僕は思うのです。人を悲しみから救ってくれるのは、人の想いであると。
 『誰かのために』という想いです。

名も知らない 顔も知らない
会ったことない 誰かのために

乃木坂46『私のために 誰かのために』より

 『風の電話』という名の希望。
 果てしなく続く復興という坂道にある、小さな希望です。


2014年 乃木坂散歩道・第110回「いま、僕たちにできること」
2013年 乃木坂散歩道・第9回「いま、僕たちにできること」

筆者プロフィール

Okabe
ワインをこよなく愛するワインヲタクです。日本ソムリエ協会シニアワインエキスパートの資格を持ちます。乃木坂との出会いは「ホップステップからのホイップ」でした。ファン目線での記事を書いていきたいと思います。(ツイッター「Okabe⊿ジャーナル」https://twitter.com/aufhebenwriter

COMMENT

  • Comments ( 4 )
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  1. いい文章でした。

  2. By 通りすがりの人

    先月だったかな、強風が吹き荒れて、風の電話が倒壊して、修復する資金もない、そんなことがありました。
    でも、それを知った多くの方々の支援により、今日も風の電話はあそこにあり、被災された方の心を癒してます。

    元々の沿岸地域の町並みだって、数年でできたわけではなく、長年にわたる人々の営みによるものです。それを取り戻そうと思ったら、それだけで同じくらいかかるのです。だから、復興が早い遅いという総論ではなく、風の電話のようにいま被災地で必要になっているもの、そこに目を向けて欲しいな、批判ではなく建設的意見が欲しいな、そう思ってしまいます。

    津波も届かなかった高台の人間の、ただの戯れ言です。お目汚し失礼しました。

  3. 隣町の話題がOKABEさんから聴けるとは嬉しい限りです。

    何かをして欲しいという気持ちよりも
    沢山の方々に「気にかけてもらってる」だけで有難いとう気持ちの方が強いです。

    イベント等に参加する機会は少ないですが、こんな片田舎にも乃木坂のファンがおりますので
    よろしくお願いします。

  4. 「乃木坂散歩道」いつも楽しみに読ませていただき、ありがとうございます。
    乃木坂46の活動と応援を心の拠り所にするささやかな人達に届く文章をこれからも読ませてください。

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